小児歯科学雑誌
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Down症候群ヒト由来細胞による歯科用セメント液の細胞毒性についての基礎的検討
小川 慶知今井 弘一嘉藤 幹夫大東 道治
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2001 年 39 巻 4 号 p. 872-876

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抄録

Down症候群は創傷治癒の遅延や薬剤に対する感受性レベルが通常とは必ずしも一致しないことが指摘されており,歯科材料に対する生物学的為害性が異なる可能性も考えられる.Down症候群は常染色体異常の中でも頻度の高い疾患の1つであるが,歯科材料の選択にあたって臨床的に参考となるデータはほとんど皆無である.そこで,Down症候群患者の結合織由来細胞と健常者の結合織由来細胞の細胞毒性レベルを,歯科材料を用いてそれぞれIC 50を指標として比較した.その結果,Detroit 539とHUC-Fの細胞毒性を比較して,リン酸亜鉛セメント液,カルボキシレートセメント液,2種のグラスアイオノマーセメント液のいずれもDetroit 539がHUC-Fより大きなIC 50を示した.一方,光硬化型グラスアイオノマーセメント液はDetroit 539がHUC-Fより僅かではあるが小さなIC 50を示した.また,4種類の合着用セメント液はDetroit 539のIC 50は,6.785~3.125mg/mlであり,また光硬化型グラスアイオノマーセメント液のF2は0.972~1,146mg/mlであった.今回,Down症候群のほとんどの核型を示す,トリソミー21の細胞が健常者の結合織由来細胞とは必ずしもその細胞毒性レベルが一致しないことが明らかになった.今後,さらにこの結果を踏まえて他の歯科材料についても検討を加える必要がある.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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