小児歯科学雑誌
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39 巻, 4 号
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  • 第1報治療体験との関連性
    河合 利方, 徳永 聖子, 中野 崇, 磯貝 美佳, 福田 理, 土屋 友幸
    2001 年 39 巻 4 号 p. 807-813
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    一般成人111名を対象に,現在の歯科診療に対して持っている恐怖の程度をVisual Analog Scale(VAS)にて評価し,過去の歯科治療に伴う苦痛体験や抑制治療体験の有無およびその時期や内容との関連性について検討し,以下の知見を得た.
    1.現在の歯科恐怖の程度では,最小値0mmから最大値100mmの間に分布し,平均値は51.3mmであった.男女間に有意な差は認められなかった.
    2.苦痛体験者のVAS値は58.5mm,苦痛非体験者では36.0mm,「覚えていない」者では39.4mmであり,体験者は他者に比べ有意に強い恐怖を示していた.
    3.苦痛体験時期の違いにおいて,歯科恐怖程度に相違は認められなかった.
    4.抑制治療体験者のVAS値は68.5mm,抑制治療非体験者では47.8mmであった.体験者と非体験者との間に歯科恐怖程度に有意な差が認められた.
    5.現在歯科受診をするとした時のイメージにおいて疼痛・恐怖に関連したイメージを記載した者のVAS値は60.7mm,治療行為群では56.6mm,環境嫌悪群46.4mm,肯定的表現群39.2mmであり,疼痛・恐怖群と肯定的表現群の間,治療行為群と肯定的表現群の間に有意な差が認められた.以上のことより過去の苦痛体験や抑制治療体験が現在の歯科恐怖や不安の形成に強く関与しているものの,それ以外の要因が複合的に関与している可能性が示唆された.
  • 中藤 尚子, 山本 誠二, 壺内 智郎, 金子 末子, 平間 雅博, 薬師寺 紀子, 樋口 将, 土肥 範勝, 尾形 小霧, 下野 勉
    2001 年 39 巻 4 号 p. 814-819
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回,歯垢検体を郵送するカリオスタット法(以下カリオスタット郵送法と略す)を導入している岡山県牛窓町の乳幼児歯科健診において,齲蝕罹患のスクリーニングとして用いた本法の有効性について経年的に検討したので報告する.
    対象は,平成元年6月から平成10年11月までの計9年5か月間のうち,1歳6か月,2歳,3歳児健診のすべてを受診し,かつ資料に不備のない245名(男児124名,女児121名)とした.
    方法は,各健診時における口腔内検診結果とカリオスタット郵送法結果値との関係を分析し,カリオスタット郵送法の齲蝕罹患に対するスクリーニングの有効性について検討を行った.
    1.1歳6か月時のカリオスタット郵送法結果値は,3歳時の一人平均齲蝕経験歯数との問に,2歳時および3歳時のカリオスタット郵送法結果値は,同時期および一年後の齲蝕罹患者率ならびに一人平均齲蝕経験歯数との問に統計的な関係が示された.
    2.2歳時,3歳時でHigh riskであった児は,Low riskであった児に比較し,3歳時の齲蝕罹患者率および一人平均齲蝕経験歯数が,統計的に高いことが示された.以上より,カリオスタット郵送法は齲蝕罹患の現症と相関し,かつ予測性も有している事が示され,齲蝕活動性試験としての妥当性が示唆された.
  • 松原 まなみ, 田村 康夫
    2001 年 39 巻 4 号 p. 820-829
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    超・極低出生体重児として出生した乳児の咀嚼機能の発達状態を知る基礎的研究として,携帯用吸啜圧測定システムを開発し,正常児との比較・検討を行った.
    低出生体重児においては,陰圧相時間,吸啜サイクル時間が短く,吸啜圧も小さかったことから,低出生体重児は一回に吸引できる量が少なく嚥下に要する時間が短縮すること,測定内変動が大きく吸啜リズムが不安定なことなどから吸啜効率が悪いことが判明した.修正齢で比較しても低出生体重児の吸啜圧は満期産児に比して小さく,咀嚼機能の発達に影響する可能性が示唆された.
    本研究で開発した携帯用吸啜波計は1回の吸啜で乳児の吸啜機能を診査できる有効な方法であることが確認された.
  • 有住 隆史, 牧 憲司, 西岡 孝浩, 佐伯 桂, 森高 久恵
    2001 年 39 巻 4 号 p. 830-838
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    亜鉛は軟骨や骨組織の成長にとって重要な必須微量元素である.そこで成長期下顎頭における亜鉛の影響を明らかにするため,生後5週齢のWistar系雄ラットを用いて対照群(標準食:34 .4ppm),亜鉛欠乏食群(0%:3.7ppm),低亜鉛食群(50%:14.7ppm),高亜鉛食群(150%:51.4ppm)の4群に分けた.各群の軟骨内骨化に関与する海綿骨部を中心とした細胞の動態を微細構造的に検索した.
    1.骨芽細胞は低亜鉛食群に比べ高亜鉛食群において出現が多かった.亜鉛欠乏食群では,活性型骨芽細胞が減少し,低亜鉛食群,高亜鉛食群及び対照群の順で活性型骨芽細胞は増加した.亜鉛が欠乏することで骨芽細胞ならびに破骨細胞の減少が認められた.
    2.骨細胞は対照群と比べ亜鉛欠乏食群にはコラーゲン原線維も多く見られ不活性な骨芽細胞が著明であることから骨形成が不充分な状態にあった.低亜鉛食群では亜鉛欠乏食群に比べると,骨形成と骨芽細胞から骨細胞への分化が進んでいるように思われた.高亜鉛食群では活性型骨芽細胞の存在があることから骨形成が盛んに行われていることが考えられた.以上の結果,亜鉛は下顎頭軟骨の成長に関与する海綿骨部を中心とした細胞の動態に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 小川 智弘, 大西 智之, 林原 哲之, 村上 裕朗, 阪下 卓, 大嶋 隆, 祖父江 鎭雄
    2001 年 39 巻 4 号 p. 839-845
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病の疾患モデルマウスであるX-linked hypophosphatemicマウス(以下Hypマウスと略す)と野生型マウスの上顎切歯におけるオステオカルシン(以下OCと略す)の分布の違いを免疫組織学的に検索した.その結果,臼歯の歯冠部に相当する唇側部では,野生型マウスの象牙質及び象牙前質の一部にOC陽性反応を認めたものの,HypマウスではOC陽性反応をほとんど認めなかった.一方,臼歯の歯根部に相当する舌側部においては,野生型マウスでは象牙質及びセメント質に強いOC陽性反応を認めたのに対し,Hypマウスではセメント質には強いOC陽性反応を認めたものの象牙質では非常に弱かった.
    以上の結果は,Hypマウスの象牙芽細胞ではオステオカルシンの分泌が障害されている可能性を示している.Hypマウスにおける象牙質石灰化不全は,低リン血症などの全身的要因によって引き起こされるという考え方が支配的であるが,今回の結果は,それ以外に局所的な因子も関与する可能性を示唆している.
  • 間山 寿代, 清野 幸男, 大和 志郎, 工藤 直樹, 管野 さゆり, 三浦 廣行
    2001 年 39 巻 4 号 p. 846-853
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1996年1月から1997年12月の間に岩手医科大学歯学部附属病院矯正歯科で下顎第三大臼歯の歯胚摘出を行った179名のなかから,動的治療を行わず,歯胚摘出前後の45° 斜位頭部エックス線規格写真が得られた20名(男児10名,女児10名)を対象に,歯胚摘出後の第一大臼歯,第二大臼歯の変化に関する検討を行い,歯胚摘出を行わなかった対照群と比較した結果,次の結論を得た.
    1.対象とした資料の歯胚摘出時の平均年齢は10歳9か月であり,10歳代が32.5%と最も多く,次いで9歳代が22.5%を占めていた.
    2.歯胚摘出後の下顎下縁平面に対する歯軸変化は,第一大臼歯で2.4°,第二大臼歯で2.8°直立していた.
    3.歯胚摘出後の咬合平面に対する歯軸変化は,第一大臼歯,第二大臼歯ともに0.5°直立していた.4.距離計測では,第一大臼歯,第二大臼歯の位置は,対照群において摘出後群よりも第一大臼歯で2.5mm,第二大臼歯で2.9mm近心に位置していた.
  • 金子 万由里, 白瀬 敏臣, 河上 智美, 大出 祥幸, 鈴木 淳子
    2001 年 39 巻 4 号 p. 854-864
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児急性白血病の治療に用いる抗腫瘍剤は治療効果の反面,副作用も強く,小児期の成長発育に障害を起こす恐れがある.本研究は,抗腫瘍剤の腹腔内注射が全身ならびに顔面頭蓋に及ぼす影響を明らかにするため,臨床で多用される硫酸ビンクリスチン(以下VCRと略す)とシクロフォスファミド(以下CPAと略す)を成長期のラットに腹腔内注射し,上腕骨と顔面頭蓋に生じる変化について形態学的ならびに病理組織学的に比較観察し,以下の所見を得た.
    1.体重は,VCR群では対照群と同様に増加したが,CPA群では増加量は少なかった.
    2.顔面頭蓋の成長は,VCR群では対照群と同様であった.CPA群では生後22日目で前顔面頭蓋幅に成長の遅れが生じ,生後54日目には全計測部位で小さくなっていた.
    3.生後54日目における上腕骨の骨長は,VCR群では対照群と差はなかったが,CPA群では短かくなっていた.VCR群では対照群とくらべ骨形成に差はなかった.一方CPA群では生後22日目で正常なモデリングによる骨形成は阻害されていたが,生後54日目には回復していた.以上より,CPAはVCRに比べ早期に骨のモデリングを阻害し,ラットの全身ならびに顔面頭蓋の成長発育に遅れが生じることが確認された.
  • 第1報Dental Fear Surveyを用いた調査
    佐野 富子, 田邊 義浩, 野田 忠
    2001 年 39 巻 4 号 p. 865-871
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回我々は,本邦における歯科恐怖症の判断基準を設定することを目的に,日本人一般青年231名(平均年齢195歳)に対し歯科恐怖に関するアンケートDFSを行い以下のような結論を得た.
    1.DFS値は男子44.09,女子46.24で過去の報告同様,女子の方が高い傾向を示し,その得点分布については諸外国とほぼ同様の結果が得られた.よって今後この日本語版DFSを,歯科恐怖のスクリーニング調査として用いても差し支えないものと思われた.
    2.歯科に対して抱く印象を正,および負に大別し,DFS値の相違を検討したところ,正の印象を有する者(33.9点)に対し,負の印象を有する者(54.5点)は有意に高い値を示した(p<0.01).
    3.因子分析の結果,DFSの設問を4要素に分けることができた.これは,歯科恐怖の因子が,個人によって様々な組み合わせであることを意味しており,DFS高得点が20設問全てにおける高得点ではないことを示唆している.ある個人の歯科恐怖が,DFSの4要素のうち,どの因子への恐怖によるかを知ることは,実際の歯科臨床において有用であると考えられた.
  • 小川 慶知, 今井 弘一, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    2001 年 39 巻 4 号 p. 872-876
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Down症候群は創傷治癒の遅延や薬剤に対する感受性レベルが通常とは必ずしも一致しないことが指摘されており,歯科材料に対する生物学的為害性が異なる可能性も考えられる.Down症候群は常染色体異常の中でも頻度の高い疾患の1つであるが,歯科材料の選択にあたって臨床的に参考となるデータはほとんど皆無である.そこで,Down症候群患者の結合織由来細胞と健常者の結合織由来細胞の細胞毒性レベルを,歯科材料を用いてそれぞれIC 50を指標として比較した.その結果,Detroit 539とHUC-Fの細胞毒性を比較して,リン酸亜鉛セメント液,カルボキシレートセメント液,2種のグラスアイオノマーセメント液のいずれもDetroit 539がHUC-Fより大きなIC 50を示した.一方,光硬化型グラスアイオノマーセメント液はDetroit 539がHUC-Fより僅かではあるが小さなIC 50を示した.また,4種類の合着用セメント液はDetroit 539のIC 50は,6.785~3.125mg/mlであり,また光硬化型グラスアイオノマーセメント液のF2は0.972~1,146mg/mlであった.今回,Down症候群のほとんどの核型を示す,トリソミー21の細胞が健常者の結合織由来細胞とは必ずしもその細胞毒性レベルが一致しないことが明らかになった.今後,さらにこの結果を踏まえて他の歯科材料についても検討を加える必要がある.
  • 伊平 弥生, 八十島 華子, 川原 由季, 大森 郁朗
    2001 年 39 巻 4 号 p. 877-883
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小窩裂溝填塞材(以下シーラントと略す)は小窩裂溝齲蝕の予防ならびに進行抑制手段として小児歯科領域では必要不可欠な材料である.本研究では従来からのBis-GMAを主材とするシーラントと異なり,Bis-GMAを主材としない2種の光重合型フッ素徐放性シーラント(フルオロシーラント,クリアシールF)を幼若な第一大臼歯咬合面に填塞し,それらの保持状態を評価すると共に齲蝕進行抑制効果を検討した.その結果,完全保持率はフルオロシーラントで51.2%,クリアシールFで87.8%であり,クリアシールFの保持率が優れていたが,いずれのシーラントを填塞した場合にも齲蝕の進行は見られなかった.
  • 山本 誠二, 新谷 智佐子, 中村 隆子, 竹本 弘枝, 滝川 雅之, 福田 延枝, 仲井 雪絵, 壼内 智郎, 下野 勉
    2001 年 39 巻 4 号 p. 884-889
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    当院は,乳幼児から成人にわたる継続した口腔内管理を実現すべく,1993年に産科に併設して開設された.今回,1996年から2001年の間に産科にて行われている1歳,1歳6か月,2歳児歯科健診に参加した幼児211名を対象に,母乳の授乳習慣と齲蝕罹患状態,齲蝕活動性および生活習慣の関係を検討した.
    1.母乳を長期授乳している者は,断乳した者に比較して1歳6か月時の平均カリオスタット値が統計的に高い値を示した.
    2.母乳を長期授乳している群は,断乳した群に比較して2歳時の齲蝕罹患者率および一人平均齲蝕経験歯数が統計的に高い値を示した.3.2歳時での生活習慣を検討した結果,母乳を長期授乳する者は断乳している者に比較して間食を不規則に摂取しており,また食べ遊びをしている者の割合が多いことが示された.
  • 守安 克也, 今泉 洋子, 大野 紘八郎, 大森 郁朗
    2001 年 39 巻 4 号 p. 890-900
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    下顎左側第一大臼歯の萌出遅延を主訴として来院した9歳2か月女児において,水平に埋伏した下顎左側第一大臼歯の歯冠内に象牙質吸収がみられた.本論文では,その臨床所見ならびに当該歯の萌出誘導について報告した.
    本症例の初診時のエックス線写真所見から,下顎左側第一大臼歯は歯冠を近心に向けて水平に埋伏しており,歯冠近心側の象牙質内に直径約4mmの球形のエックス線透過像が認められた.その透過像は歯冠の頬側に位置し,内側は近心髄角に近接して,外側は歯頸部エナメル質にまで広がっていた.歯冠外形には異常はみられなかった.
    下顎左側第一大臼歯の萌出誘導のために,下顎左側第二小臼歯の抜歯および第一大臼歯部の開窓を行った.その後,クラウンディスタルシューとマルチブラケット装置を用いた萌出誘導処置を行った結果,第一および第二大臼歯の歯軸は直立し,咬合平面に達するまでに萌出した.
    下顎左側第一大臼歯萌出後,口腔内に露出した象牙質吸収相当部の近心頬側面のエナメル質には実質欠損や色調の異常も認められず,また,歯髄反応にも異常を認めなかった.定期的に撮影したエックス線写真所見では,歯冠内の象牙質吸収の大きさや位置には変化がなく,歯周組織にも異常な所見はみられず,非進行性の吸収性病変であると考えられた.
  • 辻野 啓一郎, 藥師寺 仁
    2001 年 39 巻 4 号 p. 901-907
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において埋伏過剰歯に遭遇することは多い.しかし,上顎前歯部の過剰歯が上顎洞内に萌出したという報告は比較的少ない.今回,過剰歯が上顎洞内に萌出した1例についてその概要を報告する.
    患児は初診時11歳2か月の女児で齲蝕治療と埋伏過剰歯を主訴に他大学附属病院からの紹介で来院した.エックス線診査により,上顎右側側切歯,犬歯根端部付近に埋伏過剰歯を認めた.臨床的不快症状を認めないため経過観察を行った.初診から2年後(13歳2か月)のエックス線診査により,過剰歯の歯冠が上顎洞内に萌出しているように思われた.CT撮影を行ったところ,歯冠の約1/3が上顎洞内に萌出していることが確認された.しかし,嚢胞化や上顎洞炎などの異常所見は認められず,鼻症状を含めて臨床的不快症状はなかったため,定期的なエックス線撮影を行い,引き続き経過観察を行っていくこととした.CTによる診査が有用であった.
  • 甲原 玄秋, 佐藤 研一
    2001 年 39 巻 4 号 p. 908-914
    発行日: 2001/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口腔内出血を初発症状として判明した血液疾患を4例経験した.14歳の男児で初診時は上顎左右犬歯間の歯肉辺縁から持続する出血を認めた.来院の12日前,歯肉炎の診断により刷掃を指示されていた.その後貧血を生じ自宅で転倒し,救急車にて搬送された.血液腫瘍科で急性骨髄性白血病,播種性血管内凝固症候群の診断.血小板数は1×104/μlで止血は困難と思われたが,上顎に止血スプリントを装着し止血した.
    5歳の女児で上下全歯の歯肉辺縁から持続する出血を認めた.血小板数は0.7×104/μlであったが上下顎にスプリントを装着し止血できた.特発性血小板減少性紫斑病が疑われ,γ グロブリンの大量療法により第5病日には血小板数は5×104/μlに上昇したためスプリントを除去したが後出血をみなかった.血小板数の正常化後その減少はなく,急性特発性血小板減少性紫斑病と診断できた.
    1歳6か月の男児で舌咬傷部から持続性の出血を認めた.血液腫瘍科にて血友病Aの診断を得た.舌の縫合と第VIII因子の補充療法を行い,再出血をみなかった.
    8歳の男児で,膿瘍切開後止血困難を生じ,3か所の医療施設を受診し当院を紹介された.切開部より持続する出血を認めたが圧迫にて止血が得られた.凝固因子の検査により血友病B軽症型が判明したためスプリントを作成し,創面の保護を図り,欠乏因子の補充をすることなく後出血をみなかった.
  • 2001 年 39 巻 4 号 p. 915-
    発行日: 2001年
    公開日: 2013/01/18
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