小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
外傷を受けた乳歯に関する臨床的研究
第4報 長期的臨床経過について
宮新 美智世仲山 みね子石川 雅章小野 博志高木 裕三
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 39 巻 5 号 p. 1078-1087

詳細
抄録
乳歯の外傷で受診した小児患者48名が後継永久歯萌出後までの継続的診査に応じた.その結果,受傷した乳前歯90歯について,臨床経過を評価するための長期的経過観察を行うことができた.
90歯のうち15歯は受傷時に失われ,14歯は初診時に抜歯となった.残り61歯の内訳は,歯周組織損傷をうけたものが55歯で,硬組織損傷を受けていたものが6歯であった.歯周組織損傷歯の臨床経過としては,歯冠変色,歯髄腔狭窄,歯髄病変,および動揺度亢進を示したものがそれぞれ26%,29%,22%,9%であり,また後継永久歯に形成異常が認められたものが60%あった.初診時に保存された歯では60%に何らかの異常所見が観察されていた.また,異常所見が観察された時期を見てみると,動揺亢進の75%が受傷後1か月以内に,歯髄病変の75%が6か月以内に,歯髄腔狭窄のほぼ半数が1年以内にそれぞれ観察されていた.歯冠変色を生じた12歯のうち9歯(75%)に歯髄腔狭窄が,2歯(17%)に歯髄病変がそれぞれ観察された.歯髄腔狭窄は受傷時の年齢が低い患児の歯や,歯根未完成であった歯に多く認められ,歯髄病変は脱臼程度が重度であった歯や,歯根完成歯および歯根吸収が生じていた歯に多い傾向があった.
一方,硬組織損傷の場合,歯冠破折歯は長期間にわたり保存できたが,歯根破折歯の多くは長期間の保存が困難であった.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top