抄録
本研究の目的は,線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor;以下bFGF)とトランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor-β;以下TGF-β)が単独ないし共存下で小児上顎骨の歯槽突起から得られた骨芽細胞様細胞(infant human alveolar process of the maxilla-derived osteoblastic cells:以下HAB)の増殖・分化に及ぼす効果を明らかにすることである.実験の結果,
1.bFGF(2.5ng/ml)とTGF-β(0.5ng/ml)はHABの細胞増殖を促進し,ALP活性に対し,抑制的に作用した.
2.TGF-β(1.0ng/ml)はHABの細胞増殖を抑制し,ALP活性に対し,促進的に作用した.
3.TGF-β(0.5ng/ml)+bFGFはHABの細胞増殖をさらに促進し,ALP活性に対し,さらに抑制的に作用した.
4.bFGFはmRNA発現に対して,I型コラーゲンとALPでは顕著な変化はなくオステオカルシンに対し促進的に作用した.
5.TGF-β はmRNA発現に対して,I型コラーゲンとALPでは顕著な変化はなくオステオカルシンに対し抑制的に作用した.本研究の結果より,bFGFとTGF-β がHABに対して増殖および分化の調節作用を有するとが示された.