小児歯科学雑誌
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ガラス短繊維を添加したグラスアイオノマーセメントの機械的性質
加我 正行小林 雅博大川 昭治今 政幸吉田 英史三浦 治郎村田 翼橋本 正則小口 春久
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2001 年 39 巻 5 号 p. 1088-1094

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抄録

グラスアイオノマーセメントは齲蝕予防に重要なフッ素を徐放し,組織親和性,審美性および歯質接着性などの利点を有する.本研究の目的はCaO-P2O5-SiO2-Al2O3ガラス短繊維(アスペクト比:5.0±0.9)をグラスアイオノマーセメントに添加し,機械的強さの向上および生体に安全な歯科用セメントを開発することとした.試験片はグラスアイオノマーセメントの粉末にガラス短繊維を添加し液と練和して硬化させた.雰囲気相温度37℃,相対湿度100%の条件下にて24時問保持した.その後,静的引張試験および3点曲げ試験を行った.
その結果,ガラス短繊維を添加した試験片の引張強さおよび曲げ強さは0wt%の試験片と比較して向上し,ガラス短繊維を50wt%添加した試験片においては約2倍以上の増加を示した.また,セメント被膜厚さはガラス短繊維の添加に伴い増加した.破断面のSEM観察において,ガラス短繊維がグラスアイオノマー内に異方向に分散しているのが確認された.さらにガラス短繊維の一部はセメントマトリックスと反応し,化学的に結合していることが示唆された.よって,グラスアイオノマーセメントにガラス短繊維を添加すると繊維の形状効果および繊維表面の化学反応によって機械的特性が著しく向上するという結果が得られた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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