小児歯科学雑誌
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小児期の顎関節症症状の有無と顎関節MR画像の検討
倉田 康弘
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2001 年 39 巻 5 号 p. 937-947

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抄録

思春期以前の小児の顎関節症についての検討は少なく,顎関節症症状を伴わない小児の顎関節円板に関する報告は本邦において認められない.そこで,顎関節症症状を伴わない小児(6歳~14歳,30人)及び顎関節症症状を伴う小児(10歳~15歳,66人)におけるMR画像の検討を行ったところ以下の知見を得た.
1.顎関節症症状を伴わない小児において16.7%(5/30)が関節円板の前方転位を認め,さらにその20.0%(1/5)が復位を伴わない関節円板前方転位であった.
2.顎関節症症状を伴う小児の80.3%(53/66)に関節円板の前方転位を認め,さらにその73.6%(39/53)が復位を伴わない関節円板前方転位であった.
3.関節円板の変形は,顎関節症症状を伴わない小児において10.0%(3/30),顎関節症症状を伴う小児の59.1%(39/66)に認めた.
4.Joint effusionは,顎関節症症状を伴わない小児において認められず,顎関節症症状を伴う小児の45.5%(30/66)に認めた.
以上の結果より顎関節症症状を伴う小児において,関節円板障害の状態は決して軽症でなかった.そして特に注目すべきは,顎関節症症状を伴わない小児においても2割近くに病的状態を認めたことである.これらの事実は,小児歯科医が,低年齢児期から顎関節への関心をもち配慮の必要性を強く示唆した.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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