乳歯および幼若永久歯の深部齲蝕に対し,感染歯質を完全に除去することなく歯髄保存処置を可能とする抗菌薬を添加した裏層剤を用いた間接あるいは直接覆髄法における臨床経過を,臨床所見ならびにエックス線写真所見より長期観察したところ,以下の結果を得た.
1.乳歯132歯および幼若永久歯40歯の合計172歯の深部齲蝕処置に対し,抗菌薬を添加した裏層剤を間接覆髄あるいは直接覆髄に用いたところ,臨床成功率は95.3%と高い値を示した.予後不良例では,直接覆髄法がその大部分を占めていた.
2.年齢別臨床成績では,3~5歳の低年齢で処置後の経過不良が集中していた.
以上のことより,明らかに歯髄処置を要するような深部齲蝕に対し抗菌薬添加裏層剤の応用は有効であり,今後小児の齲蝕治療への応用を検討したい.