2001 年 39 巻 5 号 p. 986-995
叢生歯列と咀嚼機能の関係を明らかにするために,各対象者のarch length discrepancy(ALD),咬合接触個数(ICP),4つの咀嚼筋のEMGをHellmanの歯齢IICからIVAまで継続して記録した.対象者はIVAの歯列から1)正常男子,2)叢生男子,3)正常女子,4)叢生女子の4群に分けた.その結果,a)ALDは,男女ともに歯齡について叢生群と正常群との問に有意差を認めたが,IICにおいては男女ともに叢生群と正常群との問に差を認めなかった.b)ICPは女子叢生群でIIIBからIIICで正常群より有意に少なかった.c)自由咀嚼周期はIICおよびIIIAにおいて女子叢生群の方が女子正常群よりも有意に長かったが,男女共に歯齢の増加とともにその差が減少した.d)バースト期間はIICにおいて女子叢生群の方が女子正常群よりも有意に長かったが,歯齢の増加とともにその差が減少した.
以上のように,叢生群と正常群との間に形態的な違いが明らかでないIICで,EMGに機能的差異がみられたことから,叢生はIIC以降の後天的な要因だけで発生するのではなく,IICにおいて既に存在する機能的な因子も関与する可能性が示唆された.したがって,乳歯期における詳細なEMG分析によって将来発生する叢生が予測できる可能性が示唆された.