2002 年 40 巻 1 号 p. 103-113
生存期間が約1年と短く,早期に老化徴候を示す老化促進マウス(SAM PlTa以下SAM Plマウスと略す)を用い,歯の長期間の喪失が全身,特に老化に及ぼす影響を検討した。
実験方法としては,SAM Plマウス80匹を生後5週で,上下顎左右臼歯,上顎左右臼歯,下顎左右臼歯を抜歯し,飼育した。これらのマウスの測定項目は,体重,飼料摂取量,老化度指数,自発運動量であり,自然死するまで飼育した。また生後24週の舌へのアミロイド蛋白の沈着も観察した。
体重,飼料摂取量には各群間に差は認められなかった。一方,20週以降になると,抜歯した3群はコントロール群に比べ老化度指数が高く,自発運動量も少なく,早期に老化が進行していることが明らかになった。アミロイド沈着については,抜歯群では既に24週で乳頭直下にアミロイドが沈着しており,生体内でも既に老化が進行していた。死亡時期についても,コントロール群と比較して,抜歯群が早かった。しかし,抜歯部位による差は認められなかった。
以上のことより,歯が長期にわたって喪失することにより老化が早期に進行し,寿命が短くなることが示唆された。