抄録
骨格性不正咬合の遺伝子診断法開発のためにSMXA Recombinant近交系(RI)マウスを用い,上顎の近遠心方向の大きさを規定している遺伝子の探索を,量的形質遺伝解析(QTL解析)法にて行った。21系統のSMXA RIマウスを90日齢まで飼育した後,上顎骨の切歯孔前縁と蝶形骨基底部後縁の距離を測定した。上顎の大きさは最大で11.5mm(SMXA-8),最小で10.4mm(SMXA-24)であり,その他のSMXARIマウスの顎骨の大きさはこの値の間に分布したため,得られた値を量的形質値とした。
これまでに報告されているSMXA RIマウスのStrain Distribution Patternと量的形質値とを指標としてQTL解析ソフトMap Manager QTb 28を用いて全染色体を対象にQTL解析を行った。その結果,第10番染色体と第11番染色体に有意な値を得た。第10番染色体の57.9cMに位置するマーカーD 10 Mit 70でLODスコアーが2.9のsuggestiveの値を示し,第11番染色体の9.8cMおよび13.1cMに位置するマーカーD 11 Mit 152およびD 11 Mit 63でLODスコアーが5.8のsignificantの値を示した。この結果から,第10番及び第11番染色体のこれら領域に上顎の近遠心方向を規定する遺伝子が存在していることが示唆された。