抄録
小児の年齢,歯科恐怖心,浸潤麻酔経験が歯科に対する適応とどのように関係するかを明らかにする目的で,新潟大学歯学部附属病院小児歯科診療室を受診した5歳~12歳の小児795名から,歯科受診時に不適応と評価された58名と適応していた121名を抽出し,Dental Sub-scale of Children's Fear Survey Schedule(CFSS-DS)を行うと同時に,診療録から浸潤麻酔の経験時期と回数を調査した。
結果は以下の通りであった。
1. 5歳~8歳の低年齢層と9歳~12歳の高年齢層に分けたCFSS-DS値は,低年齢層の不適応群では平均31.3点,適応群では24.8点となり,高年齢層の不適応群では32.5点,適応群では22.8点となった。
2.CFSS-DS各設問の値を比較したところ,適応群では高年齢層で得点が低い傾向を認めたが,不適応群では低年齢層と高年齢層の得点は同程度であった。
3.両年齢層で,不適応群と適応群のCFSS-DS値の得点分布をみると,不適応群の中にも恐怖心が少ない患児,適応群の中にも強い恐怖心を持つ患児を認めた。
4.過去の浸潤麻酔経験とCFSS-DS値の関係を低年齢・高年齢,不適応・適応に分けて分析した結果,高年齢・不適応群で過去1年以内に浸潤麻酔の経験がなく浸潤麻酔経験の少ない患児のCFSS-DS値は39.4点で,経験の多い患児と比較して高い値を示した。