抄録
リン酸酸性フッ化ナトリウム(以下APF)溶液が光硬化型修復材の色調に及ぼす影響を知るため,溶液浸漬前後の光硬化型修復材の色調を測定し,さらに溶液浸漬後の試料表面を走査電子顕微鏡にて観察した.
光硬化型修復材は,Fuji II LC®,Vitremer®,F2000®,AP-X®,Z 100®の5種類を用いた.APF溶液はフローデン A®および自作の溶液を用い,比較対照は精製水とした.1回の浸漬時間は4分間とし,4回の浸漬を行い,浸漬前後の色調を分光式色差計を用いて測定し,色差(ΔE*ab)を算出した.統計処理はt-testならびにANOVAを用い,有意水準は5%とした.
その結果,APF溶液への4分間の浸漬前後の色差(ΔE*ab)は,精製水群と比較してZ 100®以外の光硬化型修復材において有意に高値を示した(P<0.05).また,浸漬回数の増加にしたがい色差は上昇し,浸漬4回でII LC®が最も大きく4.07,AP-X®は3.23,VitremerRは2.81,Z 100®は2.32,F 2000®は最も小さく0 .94であり,材料間で差が認められた.走査電子顕微鏡による観察でAPF溶液浸漬後の全試料表面に浸食が観察され,色差との関連性が示唆された.
以上より,APF溶液の塗布は光硬化型修復材表面形状を変化させ,それにより修復材料の色調に影響を及ぼすことが明らかとなった.