小児歯科学雑誌
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ガラス短繊維を添加したグラスアイオノマーセメントの細胞毒性とフッ素徐放について
加我 正行吉田 英史枝広 あや子大岡 貴史櫻井 誠人小林 雅博大川 昭治今 政幸野田 守小口 春久
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2003 年 41 巻 1 号 p. 133-139

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抄録

グラスアイオノマーセメントは,齲蝕予防に不可欠なフッ素の徐放と取り込みを繰り返す特性を有し,歯髄低刺激性,歯質接着性,歯冠色調和性がある.著者らはグラスアイオノマーセメントにガラス短繊維を複合させて物性を向上させる研究を行ってきた.本研究では,ガラス短繊維をグラスアイオノマーセメントに添加した場合の生体親和性とフッ素徐放効果を検索した.細胞毒性試験とフッ素徐放量の測定を行い,以下の結論を得た.
1.細胞親和性は,ミトコンドリア活性を測定した結果,Fuji II LC®(ジーシー)とSchotchbond Multipurpose®(3M)が最も良く,次に,HY-BOND GLASIONOMER CX®(松風)と20%ガラス繊維を添加したグラスアイオノマーセメントであった.
2.試料を細胞培養液中に浸漬した場合のpHは中性領域の値を示した.ガラス短繊維のみとポリアクリル酸の液を練和した試料のみが低いpHを示した.
3.フッ素の測定では,ガラス繊維を添加したグラスアイオノマーセメントからもフッ素が溶出した.ガラス繊維の添加はフッ素の徐放を抑制していなかった.
ガラス短繊維を添加したグラスアイオノマーセメントは,フッ素徐放効果が損なわれず,良好な細胞親和性を示し,齲蝕予防効果と機械的強度を有した生体に安全な歯科用セメントとして有望なことが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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