小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
下顎骨の成長発育に関する検討
守口 憲三
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 41 巻 3 号 p. 514-531

詳細
抄録
インド人小児の乾燥頭蓋骨160個体を用いて,下顎骨の発育変化を,乳歯未萌出期から永久中,側切歯萌出完了期まで,6段階に分類し,各歯齢間で比較検討した結果,次のような結論が得られた.
1.下顎枝に関連する下顎枝最小幅,下顎枝高,下顎枝垂直高,長さを表わす下顎長,下顎体長,幅の発育に関連する下顎頭幅,下顎頭最大幅,下顎角幅,前下顎幅は,いずれも,歯齢が増すにつれて増大し,とくに,乳歯萌出期に最大の発育量を示した.次いで,第二乳臼歯萌出完了期あるいは永久歯萌出開始期において発育量が増大し,永久中,側切歯の萌出完了期の発育は緩徐であった.
2.下顎頭前後最大径のみは,乳歯萌出前から乳歯列完成期まで変化がなく,永久歯の萌出開始期ではじめて有意の増大を示した.
3.下顎切痕では,幅,高さともに,乳歯萌出期に一旦減少するも,その後は歯齢を増すに従い増大し,第二乳臼歯萌出完了期,永久歯萌出開始期の順で最大の発育量を示した.
4.下顎角,下顎枝角は歯齢が増すに従い減少し,永久歯萌出開始期に最大の減少量であった.
5.角前切痕は,乳歯列完成後から緩徐な減少を続けていた.
6.下顎骨の発育は,骨体が母体となり,下顎枝,下顎頭の発育を誘導し,骨体の発育のスパートは歯の萌出と関連性をもっているものと考えられた.
7.後方臼歯の萌出余地の確保には,従来の意見に加えて,下顎骨自体における膜性骨化の増大が示唆された.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top