小児歯科学雑誌
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上顎に可撤式床拡大装置を用いた混合歯列期の歯槽性開咬の1例
佐橋 喜志夫近藤 俊石原 摩美今泉 三枝真部 滋記
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2005 年 43 巻 1 号 p. 113-121

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抄録
混合歯列期の開咬の治療には機能的改善を目的とした装置などが多く使用されている.しかし,開咬は歯列弓形態の異常を認めることから,これを改善する方法も考えられる.そこで,上顎に可撤式床拡大装置を用いて側方歯列を緩除拡大した混合歯列期の歯槽性開咬の1治験例において資料の分析を行った結果,以下の治癒機転が明らかとなった.なお,症例の資料は治療前が6歳8か月,治療後が8歳10か月,経過観察後が10歳7か月のそれぞれの顔面および口腔内写真,マウント歯列模型,正面,側面および軸位頭部エックス線規格写真と下顎安静位の咬筋および側頭筋の筋活動を用いた.
1.上下顎の歯列弓長径はともにわずかに減少していた.しかし,上下顎の歯列弓幅は拡大し,前歯部の配列余地が確保されていた.同時に,上下顎前歯は治療前,治療後,経過観察後の順に従い,それぞれ挺出と舌側移動していた.これは治療前から治療後において下顎が顕著であった.
2.側貌軟組織の垂直的バランスは治療前,治療後,経過観察後の順に相対的に上口唇高が短縮していた.さらに,水平的位置関係は治療前から治療後に上唇が後退し下唇が前突していた.
3.下顎位は治療前から治療後へと後下方に位置し,治療後と経過観察後でほぼ一致していた.これに相同して下顎安静位での咬筋の筋活動は治療前から治療後に低下し,治療後と経過観察後の差がわずかであった.側頭筋の筋活動は治療後から経過観察後に低下していた.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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