小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
急速アパタイト転換型リン酸カルシウムセメントによるラット皮下組織のpH変化
木村 奈津子有田 憲司山内 理恵西野 瑞穗
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 43 巻 3 号 p. 425-432

詳細
抄録
新しく開発された急速転換型CPCは,硬化時pH値が上昇するが,硬化後HApに転換し中性となる特徴を有する.本研究の目的は,急速転換型CPCの生活歯髄切断法への応用の可能性を検討することであり,本材の硬化時pH値の変化が生体組織のpH値を変化させ得るか否かについて検索した.被験試料として,Ca/P比の異なる2種の急速転換型CPC(Ca/P比1.7と2.0)を試作し,従来型CPCのα-TCPおよびCa(OH)2を対照群として用いた.方法は,被験試料を作用させたラットの皮下結合組織表面のpH(組織pH)値の経時的変化と被験試料自体のpH(試料pH)値の経時的変化とを比較した.
その結果,
1.α-TCPは試料pH値,組織pH値ともに中性を示した.また,Ca(OH)2の試料pH値,組織pH値ともに強アルカリ性を示した.
2.両急速転換型CPCの試料pH値は,硬化初期は13以上の値を示したが,1日後には8.4-8.9に低下した.
3.両急速転換型CPCの組織pH値は,硬化初期は11.2-12.3を示し,Ca(OH)2の組織pH値との間に有意差は認めなかった.2日後には8.0-9.5に低下した.以上より,急速転換型CPCは,短期間Ca(OH)2と同程度の刺激を歯髄に対して生じさせ,その後は中性のpH値になり,生体親和性の高い切断糊剤として利用可能であることが示唆された.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top