小児歯科学雑誌
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小児唾液からのストレス指標物質クロモグラニンAの定量
光畑 智恵子鈴木 淳司槇平 美夏曽田 芳子香西 克之
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2005 年 43 巻 5 号 p. 645-651

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抄録
歯科治療は患者に対してさまざまなストレスを与える.特に小児においては治療時のストレスが歯科恐怖や歯科不安を引き起こすと言われている.小児期の歯科恐怖は生涯にわたり口腔の健康を維持していく上で大きな障害となる.従って小児が歯科治療時に受けるストレスを客観的にとらえることは非常に重要である.今回我々は,成人においてストレス関連物質であると考えられている糖タンパク質クロモグラニンA(CgA)に着目し,小児唾液中の濃度を測定することで,歯科治療時に小児が受けるストレスを定量することを試みた.
当科を受診した5~9歳の小児42名の唾液を歯科治療の前後でそれぞれ採取し,EIA法によるキットを用いてCgAの濃度を測定した.また小児の性格診断検査と歯科恐怖についてのCFSS-DS検査も併せて行い,CgA濃度との相関を検討し,以下の結果を得た.CgA濃度は歯科治療前より後の方が低下していた.特に低年齢児と男児においては治療前後の差は有意であった.性格検査とCgA値の間に相関は認められなかったが,CFSS-DS高値の小児は低値の小児に比べ全体的にCgA値は高く,さらに診療後のCgA値低下率の小さい傾向にあった.以上のことから小児唾液中のCgA値は歯科診療時に小児が受けるストレスの指標となり得ることが示された.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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