小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
上顎左側犬歯の移転歯を伴った叢生症例
葉山 康臣尾崎 正雄石井 香井上 淳治本川 渉
著者情報
キーワード: 移転歯, 犬歯, 叢生, 咬合誘導
ジャーナル フリー

2005 年 43 巻 5 号 p. 680-688

詳細
抄録

上顎犬歯の異所萌出は,小児歯科の臨床でもしばしば観察される.しかし,上顎犬歯における遠隔移転歯の症例は少ない.今回筆者らは,上顎左側犬歯が上顎左側第一大臼歯の近心まで転位した症例を診察する機会を得た.患者は,11歳0か月の女児で,学校検診において上顎左側犬歯の異所萌出を指摘され,同部の精査を希望して来院した.既往歴に特記すべき事項は無く,歯の外傷や全身的疾患は認められなかった.口腔内所見では,上顎左側乳犬歯の残存が認められ,上顎左側犬歯が,第一大臼歯の近心頬側より萌出しており,第二小臼歯を口蓋側に移動させていた.第一大臼歯の咬合関係は,左右AngleI級であり,overjetは4.Omm,over biteは5.Ommであった.上下顎の正中線はほぼ一致していた.しかし,患児には叢生が認められ,歯列周長分析を行ったところ,上顎-7.Omm,下顎-11.2mmのarch length discrepancy が認められた.そこで,上顎左側犬歯を前方へ誘導すると共に,上下顎左右第一小臼歯を抜去し治療を行った.動的治療は,3年5か月で終了し,根の吸収など異常所見は認められなかった.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top