小児歯科学雑誌
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Nd-YAGレーザーによる健全歯質と齲蝕部の選択的削除についての研究
松根 健介三好 克実荒井 清司渋谷 功土屋 有里子井上 雄温松原 清根本 君也前田 隆秀
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2006 年 44 巻 3 号 p. 416-421

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抄録

レーザーによる治療は,エアータービンや電気エンジンによる歯の削除と比較して生体自体への振動や音の軽減による精神的苦痛の除去につながると考えられる。今回,酸化チタン液を用い,レーザー照射条件を変化させることにより,健全歯質と齲蝕部位を選択的に除去できるか否かについて検討を行った。レーザー照射はNd-YAGレーザーを使用し,照射条件は,ファイバー径600μm(シリカ,加工なし),繰返し速度5pps,1秒,300mJまたは600mJの条件下で行い,歯とファイバーとの間に濃度の異なる酸化チタン溶液を介在させた。酸化チタン濃度の変化による歯質削除量の有意差は認められなかった。また,酸化チタン液を用い,300mJと600mJのレーザー照射を行った場合,両者共に脱灰象牙質を選択的に削除できる可能性が示唆された。さらに,300mJではAgFの影響が少なかったにも関わらず,先端出力が高くなった600mJ照射時では健全歯質に反応したAgF部を多く削除してしまう可能性が示唆された。つまり,日々の臨床においてレーザーによる歯質削除を行う場合,歯面にAgFが用いられている症例においては,先端出力が高くなると脱灰層のみに対しての選択性が低くなり,健全歯質の削除量も多くなる可能性が考えられた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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