小児歯科学雑誌
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ワンボトル接着性レジンの象牙質接着性
藤田 慎一橋本 正則加我 正行八若 保孝
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2006 年 44 巻 4 号 p. 556-566

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抄録
近年,操作ステップの簡略化を目的としたワンボトルセルフエッチングシステムが開発され,臨床で広く使用されている。そこで本研究では,5種類のワンボトル接着性レジンシステム(セルフエッチング)の象牙質接着強さを微小引張接着性試験で比較し,破断面様相を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し,硝酸銀染色による接着界面のナノリーケージ解析を透過型電子顕微鏡(TEM)にて行い,接着性能を評価した。接着強さはすべてのシステムにおいて50MPa以下であったことから従来型のシステムと比較して接着強さの向上は認められなかった。
SEMおよびTEM観察の結果から,ワンボトルレジンシステムの樹脂含浸層はスミア層を包含したコラーゲン線維,象牙質硬組織,レジンによる複合体により形成されているためナノリーケージは比較的少ない特徴を有していた。しかし,多量に含有する水や溶媒の影響によりボンディングレジン層に顕著なナノリーケージ,ウォーターツリーおよび水分小滴が形成されていた。ボンディングレジン層のリーケージ形成の原因はボンディング剤に含有するモノマーと水の相分離および接着時の象牙細管からレジンへの水分吸収によって起こると考えられた。これらナノリーケージは接着界面内における水分浸入の経路となり,接着構造の長期耐久性低下の要因となることから,レジン成分の疎水性を高める必要性が示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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