小児歯科学雑誌
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唾液α-アミラーゼの定量による小児患者の歯科治療におけるストレスの評価
平尾 彰規野崎 中成大東 道治
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2006 年 44 巻 4 号 p. 573-580

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抄録

歯科治療において診療環境や痛みなど種々の刺激で,患者に恐怖や不安が生じ,ストレスの要因となる。このストレスがいわゆる受診回避や早期治療の機会を失う原因となる。歯科治療を適切に遂行するためには,患者のストレスを的確に評価することが重要な課題である。唾液α-アミラーゼは,精神的ストレスの指標として近年注目されている。本研究では,小児患者の歯科治療時におけるストレスを的確に評価する方法として唾液α-アミラーゼについて検討した。治療の前後における唾液α-アミラーゼ活性を定量し,酵素活性の変動と歯科治療内容の対比から,唾液α-アミラーゼ活性の測定によってどの程度ストレスを評価できるか試みた。小児において唾液α-アミラーゼ活性を定量することは可能であったが,個体間のばらつきが顕著であった。対象の75%が処置後に酵素活性が有意に増加していた。特に,観血的処置後の酵素活性値の有意な上昇が認められ,治療内容の重篤度とストレス増大との関連が示唆された。以上のことから,唾液α-アミラーゼ活性の変動は,小児の歯科治療における治療の重篤度に応じて変動するストレスを捕捉する指標になることが示された。小児の歯科治療におけるストレスの評価方法として,唾液α-アミラーゼ活性の定量は簡便かつ非侵襲的で有用であると考えられた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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