抄録
現在,乳歯列期前歯部反対咬合の治療には,筋均衡を改善する機能的矯正装置であるムーシールドを第一選択とすることがある。しかしながら,顎の発育の推移によっては被蓋改善の得にくい症例もあり,何らかの適応症の判断基準を検討する必要がある。
そこで,本研究ではムーシールドを用いて乳歯列期前歯部反対咬合が改善された患児10名(以下単独使用群)と,他装置も併用して改善された患児10名(以下併用群)の治療開始前の側面頭部エックス線規格写真を用いて,両群間の顎顔面および舌骨位の形態学的計測項目の比較検討を行った。
その結果,併用群は単独使用群と比較して顎顔面形態の分析項目であるANB,AO-BO,overjetのほかにKix-indexで有意差が認められた。
以上より,これら各項目は乳歯列期前歯部反対咬合の治療開始前に,機能的矯正装置を適応する際の判断基準になりうるものと推察された。