小児歯科学雑誌
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本学小児歯科外来における初診患児の実態調査
松本 弘紀角田 初恵夏堀 裕之原田 利佳子田中 光郎
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2007 年 45 巻 3 号 p. 405-411

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抄録

少子化と齲蝕罹患者率の減少という社会状況において当小児歯科に求められている役割の現状を把握し,的確に対応する方策を検討するために,平成13年4月から平成17年年3月までの5年間に本学小児歯科外来を受診した全初診患児の初診時の問診表およびカルテをもとに実態調査を行い,以下の結果を得た.
1.初診患児数は3歳から7歳が多かった.これは,歯科疾患実態調査の結果に比べて,一人平均齲蝕歯数が多い年齢層であり,また齲蝕を主訴として来院する比率も高かったことから,治療に対する協力性が乏しく,治療が困難であるために当科を受診した患児が多かったためと推測された.
2.患児の居住地は盛岡市内と近郊で62.6%を占めていたが,その他の地域から来院する患児では50.8%と紹介率が高く,当科の北東北地区における二次・三次医療機関としての役割を示唆していた.
3.当科への紹介患者は全初診患者の38.7%であり,平成13年度から平成17年度にかけて,21.6%増加した.開業医からの紹介と医学部からの紹介に増加傾向が認められ,この結果も当科の二次・三次医療機関としての位置づけが示されていた.
4.初診時の主訴は齲蝕処置が40.6%で最も多く,次いで歯列咬合18.4%,診査希望13.0%,外傷10.6%の順であった.これは大学病院小児歯科にはいまも低年齢児や非協力児に対しての齲蝕処置が患者からも開業歯科医師からも求められているためと考えられた.
5.年齢別一人平均齲蝕歯数(乳歯)は,平成17年歯科疾患実態調と比較して,殆どの年齢において実態調査の一人平均齲蝕歯数を上回っており,5歳以下ではその傾向がさらに明確に認められた.年齢別一人平均齲蝕歯数(永久歯)は,平成17年歯科疾患実態調査と比較して,10歳以上の年齢において実態調査の一人平均齲蝕歯数を上回っていた.また未処置歯分類(乳歯)ではC2,C3を持つ者の割合が多かった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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