小児歯科学雑誌
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小児の性格と視知覚分析 -心理検査による依存的な小児と自立的な小児との比較-
大野 裕美下岡 正八田中 聖至本間 裕章馬場 宏俊
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2008 年 46 巻 1 号 p. 33-41

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抄録

今回著者らは,小児の性格の違いで視知覚による情報探索の仕方に違いがあるかどうかを知るために,小児の性格を心理検査の一つであるTS式幼児・児童性格診断検査を用いて,依存群,標準群,自立群に分類し,歯科医師の正立顔写真に対する小児の眼球運動を測定した。移動角速度秒速5度未満を停留点,5度以上をサッケードとして分析し,以下の結論を得た。
1.小児の顔の見方には性格が影響していることが示唆された。
2.停留回数,停留時間とも依存群,標準群,自立群の順に増加した。部位別では諸部分を中心とした顔への停留が最も多く,特に自立群において増加した。
3.停留点,サッケードの分布は各群とも諸部分を中心とした顔への分布が多く認められた。
4.視線の走査方向には4つのタイプが認められ,自立群では繰り返し,「みる」Lookなどの規則性のある走査が増加する傾向にあった。
5.依存群の顔の見方は従来の小児の顔の見方に類似し,自立群の顔の見方は成人の顔の見方に類似していることが認められた。しかし,依存群と従来の小児の見方は間違っているわけではなく,発達の一過程であることが示唆された。従って小児が何故そのような見方をしたのかを知ることは,小児一人ひとりの発達のプロセスを理解する上で重要と考える。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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