小児歯科学雑誌
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46 巻, 1 号
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  • 森 裕佳子
    2008 年 46 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科恐怖は集団の疾病構造や医療サービスの質を反映すると言われており,日本人小児の歯科恐怖の実態を調査しその予防に努めることは日本の医療レベルの向上に有効であると考えられる。本研究では3~8歳の低年齢児を対象に,国際的に認知度が高く広く応用されているDental Subscale of Children's Fear Survey Schedule(CFSS-DS)を用い,保護者回答用日本語版CFSS-DSに改変し,その信頼性・妥当性の検証を行った。また恐怖レベルのカットオフ値をROC曲線を用いて算出した。さらに一般集団を対象に疫学的調査を行い,ロジスティック回帰分析により歯科恐怖の実態と誘因について検討した。また臨床集団に対する調査から齲蝕・処置経験と歯科恐怖の関係について検討した結果,以下の結論を得た。
    1.保護者回答用日本語版CFSS-DSは高い信頼性と妥当性を示した。また日本人低年齢児の恐怖レベルのカットオフ値は33点であった。
    2.一般集団と臨床集団のCFSS-DS平均点に差を認めなかった(32.1±11.2点vs32.0±11.6点)。
    3.日本人小児の歯科恐怖度は他国と比較して高かった。また歯科恐怖度に男女差を認めなかった。
    4.「親の歯科恐怖度が高い」,「5歳以下」,「齲蝕処置経験がない」,「回答時歯科受診していない」,「局所麻酔経験がない」という因子でHigh Fearになりやすかった。
  • 山中 香織, 仲井 雪絵, 岡本 誠, 進賀 知加子, 加持 真理, 吉田 登志子, 下野 勉
    2008 年 46 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳幼児期から中学・高校まで長期間にわたり定期的に鶴蝕予防中心の歯科医療を受けた者の歯科恐怖は低い,という仮説を検証することを目的に,O小児歯科医院(大阪府茨木市)を定期健診のために受診した12-18歳の患児107名(男児57名女児50名;平均年齢14.4±1.4歳,初診時平均年齢4.2±3.0歳)を調査対象とし,Dental Subscale of Children's Fear Survey Schedule(CFSS-DS)を用いて歯科恐怖に関する調査を行ったところ,以下の結論を得た。
    1.CFSS-DS合計点の平均値は22.8±8.0点であり,すでに報告されているわが国の疫学的調査結果より低い値であった。また,男女間に有意差は認めなかった。
    2.本研究対象者における歯科恐怖レベルは,他国の調査結果と比較しても低く,特に北欧諸国における数値に近似していた。小児期から長期間の齲蝕予防中心の歯科医療を受療すると歯科恐怖の発現が北欧レベルまで抑制されると考えられる。
    3.CFSS-DSの項目別平均点の数値が高い5項目は順に,「歯をけずられること」,「注射」,「息がつまること」,「歯をけずる音」,「歯をけずっているのを見ること」,「誰かが器具を口に入れること」であった。
    4.歯科受診行動に関する3項目においては,CFSS-DS合計点との間にいずれも有意な正の相関を認めたため,歯科恐怖は受療行動と関連があることが示唆された。
  • 石谷 徳人, 吉原 俊博, 舛元 康浩, 齋藤 一誠, 稲田 絵美, 山崎 要一
    2008 年 46 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    顎関節症などの口腔顔面痛を有する患者への重要な検査項目に,顎顔面領域の筋の触診がある。しかしながら,筋の触診の再現性には多くの技術的な問題があるだけでなく,患者個人の精神身体的状態の影響も少なからず関与しているものと思われる。そこで今回著者らは,健常成人20名に対し,精神身体的状態を2種類の心理テスト(State-Trait Anxiety Inventory,以下STAIおよびProfile of Mood States,以下POMS)により評価した。さらに圧痛計を用いて,茎状突起部に対する圧痛閾値測定を行い,精神身体的状態が顎顔面部における圧痛閾値測定結果に及ぼす影響について調査した。各被験者から得られた心理テストの各因子の得点と圧痛閾値の変動係数との相関を検討したところ,茎状突起部における圧痛閾値の変動係数とSTAI,POMSの否定的感情に関連した5つ因子の得点との問に有意な正の相関が見られた。本研究結果から,口腔顔面痛を有する患者は精神身体的状態により,筋の触診などの検査結果に影響を生じ,誤った検査結果を導き出してしまう可能性があることが示唆された。
  • 辻野 啓一郎, 坪倉 亜希子, 金子 かおり, 望月 清志, 大多和 由美, 藥師寺 仁
    2008 年 46 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において定期健診の持つ役割は大きい。定期健診の効果を上げ,受診率を高めていくためにも,保護者や小児の定期健診に対する意識や期待を把握しておくことは重要である。これらを把握する目的で,2004年7月からの2か月間に,東京歯科大学水道橋病院小児歯科へ定期健診のため来院した小児の保護者を対象に定期健診に関する意識調査を行った。本調査の目的を説明し,同意を得られた323名を対象に調査を行い,以下の結論を得た。
    1.回答者が適切と考える定期健診の間隔は,4か月が最も多かった。また,回答した間隔での通院は大多数が負担には感じないと回答していた。
    2.定期健診に期待することは,「齲蝕予防」が95.4%と最も多く,次いで「歯並び」「歯ブラシの上達」の順であった。また,その期待に応えられているかに対しては,「十分に期待通り」,「まあ期待通り」を合わせて90%以上を占めていた。
    3.「定期健診にいつまで通うべきか」は,「大人になっても通うべき」が最も多く,次いで「中学卒業まで」であった。特に定期健診来院小児が減少する10歳以降の小児の歯列の成長や齲蝕予防について,保護者および小児の理解を深めさせていく必要性があると思われた。
  • 大野 裕美, 下岡 正八, 田中 聖至, 本間 裕章, 馬場 宏俊
    2008 年 46 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回著者らは,小児の性格の違いで視知覚による情報探索の仕方に違いがあるかどうかを知るために,小児の性格を心理検査の一つであるTS式幼児・児童性格診断検査を用いて,依存群,標準群,自立群に分類し,歯科医師の正立顔写真に対する小児の眼球運動を測定した。移動角速度秒速5度未満を停留点,5度以上をサッケードとして分析し,以下の結論を得た。
    1.小児の顔の見方には性格が影響していることが示唆された。
    2.停留回数,停留時間とも依存群,標準群,自立群の順に増加した。部位別では諸部分を中心とした顔への停留が最も多く,特に自立群において増加した。
    3.停留点,サッケードの分布は各群とも諸部分を中心とした顔への分布が多く認められた。
    4.視線の走査方向には4つのタイプが認められ,自立群では繰り返し,「みる」Lookなどの規則性のある走査が増加する傾向にあった。
    5.依存群の顔の見方は従来の小児の顔の見方に類似し,自立群の顔の見方は成人の顔の見方に類似していることが認められた。しかし,依存群と従来の小児の見方は間違っているわけではなく,発達の一過程であることが示唆された。従って小児が何故そのような見方をしたのかを知ることは,小児一人ひとりの発達のプロセスを理解する上で重要と考える。
  • 久山 晃司, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    2008 年 46 巻 1 号 p. 42-52
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の咬合育成において,正常な歯列や顎骨の成長発育に障害となる吸指癖は,上顎前突,開咬,上顎歯列狭窄や交叉咬合などを発現させることになる。そこで,私たちは,小児の乾燥頭蓋から乳歯列期の上顎骨の三次元有限要素法モデルを作成し,口蓋部に吸指癖の影響を想定した荷重を負荷して上顎歯列および上顎骨の形態変化の解析を行った結果,以下の結論を得た。
    1.上顎乳切歯では,指で加圧する部位が口蓋面の深い部位になるにつれて,over jetは大きくなり,overbiteは浅くなった。
    2.上顎乳犬歯では,指で加圧する部位が口蓋面の深い部位になるにつれて前方移動量と上方移動量が多くなった。
    3.上顎第一乳臼歯では,指で加圧する部位が口蓋面の深い部位になるにつれて側方移動量が多くなった。
    4.上顎第二乳臼歯では,指で加圧する部位が口蓋面の深い部位になっても移動量は少なかった。
    5.上顎骨では,指で加圧する部位が口蓋面の深い部位になるにつれて前方移動量と上方移動量が多くなった。
    本研究は,口腔習癖に対する指導,診断や治療に活用できることを示唆している。
  • 板垣 優美, 杉山 智美, 小林 聡美, 浅里 仁, 井上 美津子
    2008 年 46 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年小児のアレルギー患者が増加しているが,歯科治療時におけるアレルギー症状の発現に対する予測や対応法などは確立されていない。今回,当科来院児のアレルギーの有病者率の把握とアレルギーをもつ小児に対しての安全な歯科治療の指針づくりに寄与する目的で,実態調査を行った。
    対象は平成15年1月から平成17年12月の間に本学小児歯科外来に初診で来院した0歳から12歳の小児1745名とし,予診表,診療録を用いて調査を行った。その結果
    1.1745名のうち何らかのアレルギーを有する小児は683名(39.1%)であった。
    2.アレルギーの既往のある小児とない小児の主訴には大きな違いは認められなかった。
    3.アレルギーの種類では,アトピー性皮膚炎の割合が最も多く,次に食物,喘息,薬物の順に多い結果となった。
    4.アレルギーの既往のある小児のほうが,アレルギーのない小児と比較して局所麻酔経験が多かった。
    5.歯科治療前に局所麻酔薬の皮内テストやプリックテスト,歯科用金属,歯科用薬品,材料のパッチテストを行った小児は25名であった。今後も十分な医療面接により,薬物や食物などへのアレルギー反応の有無を聞きとることの重要性が示唆された。そしてその結果から危険性が考えられる場合には,歯科治療前にアレルギー検査を施行し,不測な事態を未然に防ぐことが小児歯科臨床において重要であると考えられた。
  • 平野 慶子, 岡崎 好秀, 吉田 絵美, 金尾 晃, 杜 小浦, Omar Rodis, 松村 誠士, 下野 勉, 山岸 敦, 押野 一志
    2008 年 46 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    某小学校の4年,5年,6年生において永久前歯に初期齲蝕(白斑)を持つ児童35名103歯に,口腔衛生指導と2種類のフッ化物を配合した歯磨剤の供与を行った。その後,偏光フィルターを使用したデジタルカメラで撮影し,画像ソフトを使用してRGB分離を行ない,初期齲蝕の面積の測定を行って口腔衛生指導の効果を判定した。1.対象は4年生が12人(39歯)5年生が12人(32歯)6年生が11人(32歯)の計35名(103歯)であった。また分析した歯種は60%が上顎左右中切歯であり,30%が上顎左右側切歯であった。2.全学年の平均1歯あたりの脱灰面積は1回目(開始時)指導時が9.3mm2,2回目指導時が7.6mm2,3回目指導時が6.3mm2と口腔衛生指導が進むにつれて減少が認められ1回目と2回目,1回目と3回目では有意な差を認めた。また各学年別では同様に1回目と2,3回目の面積を比較したところ1回目と2回目は4年生のみ有意な差を認め,1回目と3回目ではすべての学年に有意な差を認めた。3.初期齲蝕面積においては約41%の歯が2回目,3回目と連続して減少し,約22%の歯が2回目で一度減少した後に3回目で増加し,約25%の歯が2回目で一度増加した後3回目で減少した。約8%の歯は2回目,3回目と増加を続けた。
  • 2008 年 46 巻 1 号 p. 67-68
    発行日: 2008/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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