小児歯科学雑誌
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下顎第二小臼歯にみられた歯内歯の歯内療法
小平 裕恵本強矢 直子藤橋 あすか井出 正道大野 紘八郎朝田 芳信
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2008 年 46 巻 3 号 p. 360-366

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抄録
歯内歯は,歯冠部の象牙質の一部が表層のエナメル質とともに歯髄腔内に深く陥入した形態異常歯であり,エナメル質形成前に内エナメル上皮の一部が歯乳頭内に深く侵入,増殖したことにより生じたものと考えられている。出現部位は上顎側切歯に多く,まれに小臼歯,大臼歯,乳前歯,過剰歯にも認められることがある。歯内歯の出現率は報告者や歯種によりまちまちではあるが,0.04~10%と報告され,性差はないとされている。本症例のように下顎第二小臼歯に歯内歯がみられることは稀である。本症例は,下顎右側頬側歯肉の腫脹を主訴に来院した12歳の女児の症例報告であり,視診から当該歯の歯冠幅は大きく,咬合面に中心結節破折様の象牙質の露出がみられた。エックス線画像所見より,根尖部に透過像とともに歯内歯様構造物が認められた。当該歯の長期間にわたる感染根管治療および修復処置と,その後の臨床経過から以下のように結論づけられた。臨床上,口腔内診査およびエックス線画像より歯内歯が疑われた場合には,形態異常歯である歯内歯の根管治療が技術的に非常に困難であることから,小窩裂溝填塞などによる歯髄への細菌感染の予防を第一選択とし,且つ継続的な経過観察を行う必要がある。さらに歯髄感染の徴候がみられた場合には出来るだけ早期に歯内療法を施すことが肝要である。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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