抄録
小児の歯科診療時の心理状態の把握方法は種々報告されているが,それらを障害児に応用するには,意思の伝達方法などから困難な場合が多い。そこで,今回,大阪歯科大学小児歯科・障害者歯科外来を受診した知的障害児・者17名と健常児17名を対象とし,診療開始前と終了後に7色の歯ブラシを用いた色選択法を表情指摘と併せて実施し,歯科診療時の心理状態の把握方法としての有効性について検討した。
1.障害児・者群と健常児群では,色・形分類検査,診療室への入室態度,診療前に選んだ色,診療内容,診療前に選んだ色が好きな色と一致したかどうかの項目に有意の差が認められた。
2.診療前と治療後に選択した色が異なっている者は,障害児・者群17名中15名,健常児群17名中12名と多く,両群とも色の変化の有無と診療内容に関連が認められた。
3.診療前と治療後で選択した色の変化の有無と表情指摘の変化の有無との関連については,有意の差は認められなかった。
4.各色に対して選択した顔の表情は必ずしも一致しないことから,色のイメージは固定したものではなく個人によって異なると考えられた。
5.色選択法は障害児・者にも簡便に用いることができ,今後,各個人の色に対するイメージ調査を加えることにより,心理状態の把握方法として応用できるのではないかと考えられた。