抄録
重症患者における早期経腸栄養の重要性が認識されている。経腸栄養管理の開始時には循環の安定性や腸管機能の評価を行う必要がある。消化管に問題がなく、循環動態が安定していれば早期に経腸栄養を開始すべきであり、開始時期の遅れは腸管麻痺の遷延、bacterial translocationにつながる。大量のカテコラミンを必要とする病態、腸管虚血/壊死のリスクが高い病態での経腸栄養投与は難しい。一方、経腸栄養開始後は嘔吐や下痢などの合併症が問題となる。嘔吐に対しては、頭側挙上、持続投与や経空腸投与への変更、腸管蠕動改善薬の投与などの有用性が報告されている。また、下痢に対しては、経腸栄養の投与量や投与時間の調節、経空腸投与から経胃投与への変更、腸管蠕動に関与する薬剤の調整、栄養剤の変更(食物繊維含有、低浸透圧、ペプチド、半固形化)などの対策が考えられるが、有効性を示す十分なエビデンスは得られていない。