抄録
n-3系不飽和多価脂肪酸の一つであるエイコサペンタエン酸(EPA)には抗炎症作用や抗がん作用があることが多くの研究で明らかとなってきている。古くはグリーンランドでの疫学調査でEPAを豊富に含む食事を摂取する人々には急性心筋梗塞の発症率が低かったとする報告により注目を浴びたのだが、それ以降の研究でEPAには様々な作用があることが解明されてきた。なかでも今回注目したがんに対する作用については日々新たな研究成果が発表され、臨床応用がなされつつある。さらなる研究によって詳細な作用機序の解明と本格的な臨床応用が待たれるところである。EPAとがんというテーマでEPA の抗がん作用に対する近年の研究を見るとともに、がんと密接な関係にある炎症、その炎症を抑える作用においてEPAより代謝される脂質メディエーターの作用についても注目し報告する。