2017 年 32 巻 3 号 p. 1185-1187
長期投与されたランソプラゾールの中止により難治性の下痢が改善したと思われる症例を報告する。症例は78歳の男性で、慢性心不全にて入院中、脳梗塞を発症した。経管栄養を施行していたが嘔吐と下痢が続き、また誤嚥性肺炎も繰り返した。経管栄養を中止して、完全静脈栄養による栄養管理を行った。栄養サポートチームが介入し、ランソプラゾールを中止した。大腸内視鏡検査とその際施行された生検によりCollagenous Colitisと診断され、臨床経過から難治性の下痢はランソプラゾールによる薬剤性下痢であったと推測された。下痢の改善と共に、栄養状態も改善し経口摂取も可能となった。高齢者が増えた現在、多くの疾患を抱え、多くの薬を服用している。一方で薬剤が原因とされる慢性下痢症でCollagenous Colitisの増加が報告されている。難治性の下痢が見られたとき本症を念頭におくことが重要である。