日本静脈経腸栄養学会雑誌
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Print ISSN : 2189-0161
原著
高齢者の市中肺炎症例において絶食が摂食嚥下機能に及ぼす影響
武政 葉子大村 健二長岡 亜由美有路 亜由美板橋 弘明山口 賢一郎山下 恵富田 文貞山野井 貴彦中熊 尊士德永 惠子
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キーワード: 市中肺炎, 絶食, 嚥下障害
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2017 年 32 巻 4 号 p. 1348-1352

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抄録

【対象と方法】75歳以上の肺炎で医療・介護関連肺炎症例と、誤嚥性肺炎の既往または、摂食嚥下障害を疑う情報を有する症例を除く56例を対象とした。退院時に嚥下障害が残存した群(14例)と残存しなかった群(42例)を比較した。【結果】残存群は非残存群より有意に絶食食数が多かった。両群間で言語聴覚士(speech therapist;以下、STと略)の介入時期に差はなかった。理学療法の開始時期は非残存群で有意に早く、理学療法士(physical therapist;PT)介入時のBarthel Index(以下、BIと略)は残存群で有意に低値であった。退院時のBIは両群で理学療法開始時と比較して有意に増加し、両群間にあったBIの差は消失した。【結論】高齢者肺炎の治療中に発生する嚥下障害には絶食の関与が考えられた。また、理学療法開始の遅延が嚥下障害の発生と遷延に関与していると考えられた。さらに、このような嚥下障害は理学療法のみでは改善しないと考えられた。高齢者肺炎の診療では、STによる早期の嚥下機能評価、適切な栄養管理、早期に開始する理学療法が必要である。

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© 2017 日本静脈経腸栄養学会
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