【目的】口腔ケアは特定の細菌をターゲットとはせず、口腔内細菌の絶対数を減少させることが重要であり、誤嚥性肺炎患者の治療と予防に有用とされる。誤嚥性肺炎患者の口腔内細菌叢と栄養状態の評価を行うことは肺炎治療の検討・予後予測の参考となる可能性を考え、その関連性について調査を行った。【対象および方法】平成25年4月~平成28年6月の間に当院に入院し口腔ケア依頼があった誤嚥性肺炎患者68例を対象に行った。口腔ケア介入時に口腔内細菌検査と栄養状態についてcontrolling nutritional status score(以下、CONUTと略)を用いて評価を行った。【結果】肺炎改善例と肺炎死亡例の比較ではKlebsiella.P、Enterobacter、Corynebacteriumの検出率について死亡例の方が有意に高率であった(p<0.05:χ2検定)。CONUTによる栄養状態評価については、肺炎死亡例では88%において高度栄養状態不良症例であり、肺炎改善例と肺炎死亡例では有意に栄養状態不良が高率であった(p<0.01:χ2検定)。また年齢別では80歳以上に栄養状態不良が多くみられた(p<0.05:χ2検定)。【結論】誤嚥性肺炎患者の口腔内細菌叢、栄養状態、予後について因果関係が認められた。様々な基礎疾患を有した高齢者の誤嚥性肺炎は致死的であることから継続した口腔ケアが必要であり、再発予防・治療方針の検討・予後予測の参考のため口腔衛生状態や口腔内の客観的な評価として細菌学的なモニターは重要と考える。
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