日本静脈経腸栄養学会雑誌
Online ISSN : 2189-017x
Print ISSN : 2189-0161
特集
周術期の脂肪乳剤使用の現状
井田 智熊谷 厚志峯 真司比企 直樹
著者情報
キーワード: 脂肪乳剤, 周術期, 投与速度
ジャーナル フリー

2018 年 33 巻 2 号 p. 738-741

詳細
抄録

脂肪は重要なエネルギー基質であると同時に,生体の膜構造の維持に不可欠な栄養素であり,周術期には欠かせないものである。近年,院内のNST活動の普及などによる栄養療法への意識の高まりもあり,脂肪乳剤投与の重要性は認識されるようになってきた。しかし,本邦での脂肪乳剤の併用率はいまだ低いのが現状である。脂肪乳剤投与が敬遠されてきた要因は,1)本邦で使用される脂肪乳剤がn-6系脂肪酸を主成分とする大豆油由来であり,術後の炎症反応の悪化や,免疫能の低下を引き起こす可能性があること,2)脂肪乳剤投与下では微生物が増殖しやすいこと,など脂肪乳剤投与が特に周術期には発生して欲しくないリスクをはらんでいることであろう。これらの問題点に対して,適切な投与速度を遵守する,輸液ラインを24時間以内に交換するなどの対応をすることで,脂肪乳剤は安全に投与できる。

著者関連情報
© 2018 日本静脈経腸栄養学会
前の記事 次の記事
feedback
Top