抄録
当院で過去3年間に経験した異所性静脈瘤11症例を対象に,その臨床像をretrospectiveに検討した.症例の内訳は,十二指腸静脈瘤9例と胆管癌術後再発による肝管空腸吻合部静脈瘤の2例であった.十二指腸静脈瘤症例の基礎疾患は全て肝硬変症であった.十二指腸静脈瘤の発見契機,部位および所見は,出血2例,スクリーニングないし経過観察の内視鏡7例,下行脚6例,水平脚2例,球部1例で,F1 5例,F2 3例,F3 1例,びらん1例,RCサイン陽性2例であった.出血した2例と増大傾向を認めた1例に対し,EISを行った.MD-CTおよびEUSによる血行動態評価後に,cyanoacrylate系薬剤とethanolamine oleateの併用によるEISを施行した.2例は初回治療でF0となり,再発を認めなかった.残りの1例は,静脈瘤消失までに9回のEISを要した.全例で重篤な合併症は認めなかった.胆管癌術後の肝管空腸吻合部静脈瘤2例の診断にはダブルバルーン内視鏡が有用であった.