日本門脈圧亢進症学会雑誌
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15 巻, 2 号
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特集:胃所性静脈瘤
総説
  • 柿崎 暁, 豊田 満夫, 山田 博子, 柳澤 正敏, 壁谷 建志, 市川 武, 佐藤 賢, 高木 均, 森 昌朋, 新井 弘隆, 小野里 康 ...
    2009 年 15 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    食道,胃以外のいわゆる異所性静脈瘤は,比較的稀な疾患と考えられているが,発生頻度,部位については十分には明らかにされていない.異所性静脈瘤はその豊富な血流量のため,いったん出血をきたすと止血が困難で時に致命的となる.一方,出血のリスクや頻度は十分に明らかではなく,予後も静脈瘤からの出血に加え,基礎疾患の肝機能にも左右されるため,治療の方法,適応に関しては一定の見解が得られていないのが現状である.異所性静脈瘤の頻度,病態について検討することは,治療戦略を決定する上で重要と考えられ,本稿では当科で経験した症例に文献的考察を加え報告する.異所性静脈瘤の中では十二指腸静脈瘤の頻度が最も高く,出血例では,内視鏡的止血後にインターベンション(IVR)治療を追加する治療戦略が有効であった.
  • 佐藤 隆啓, 山崎 克, 赤池 淳
    2009 年 15 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    異所性静脈瘤の頻度は内視鏡あるいはIVRで治療した食道胃静脈瘤患者1218例中43例(3.4%)であった.その中で頻度が最も多かったのは直腸静脈瘤であった.異所性静脈瘤全例に食道胃静脈瘤の治療歴あるいは並存を認めた.小腸静脈瘤症例にはいずれも腹部手術歴があった.異所性静脈瘤出血例は内視鏡あるいはIVR治療により,全例で出血コントロールが可能であった.肝硬変や肝癌の治療成績の向上や食道胃静脈瘤に対する治療が確立されたことにより,門脈圧亢進症患者の病態において異所性静脈瘤の頻度が増加する可能性は高く,その対策は重要である.
  • 金沢 秀典, 楢原 義之, 福田 健, 近藤 千紗, 張本 滉智, 松下 洋子, 城所 秀子, 片倉 玲樹, 厚川 正則, 中塚 雄久, 坂 ...
    2009 年 15 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    異所性静脈瘤とは門脈圧亢進症による副血行路が形成する胃食道静脈瘤以外の腹腔内静脈瘤をさす.経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(Transjugular intrahepatic portosystemic shunt: TIPS)は門脈圧を大きく低下させるため異所性静脈瘤の治療として有用な可能性がある.既報によれば,TIPSによる異所性静脈瘤破裂の緊急止血率は約90%であり,約25%にシャント狭窄・局所的原因などを理由に再出血が見られる.術後の生存率は基礎疾患の重症度に左右されるがChild-Pughスコアが8点程度の場合には1年生存率は約80%である.異所性静脈瘤は頻度が少ないため現在まで各種治療法の比較試験は為されていない.その治療戦略の確定には今後の検討が必要である.
  • 高木 忠之, 入澤 篤志, 渋川 悟朗, 今村 秀道, 佐藤 愛, 佐藤 匡記, 池田 恒彦, 鈴木 玲, 渡辺 晃, 中村 純, 引地 拓 ...
    2009 年 15 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    異所性静脈瘤とは,食道,胃以外の部位に形成された静脈瘤と定義される.部位としては十二指腸,小腸,直腸など消化管に多いが,稀に胆道系にも認められる.基礎疾患としては肝外門脈閉塞症が多く,症状としては静脈瘤自体による閉塞性黄疸を起こすことがあるが,静脈瘤出血はきわめて稀である.胆管静脈瘤の発生には,paracholedochal vein,epicholedochal veinといった二つの静脈系が関与しており,多くは求肝性の血流が静脈瘤形成に関わる.MDCT,EUS,ERCP時のIDUSにて血管(側副血行路)による胆管の圧排所見がみられれば診断は容易である.静脈瘤に対する根治的治療法は確立されておらず,各種症状に対して対症的に治療が行われることが多い.閉塞性黄疸に対しては経乳頭的な胆管ステント留置が有用とされている.門脈圧亢進症患者が閉塞性黄疸を呈した際には,本病態を念頭に対処することが必要である.
  • 高木 均, 星野 崇, 乾 正幸, 長沼 篤, 工藤 智洋, 柿崎 暁, 松井 正之, 小島 明, 大野 順弘
    2009 年 15 巻 2 号 p. 166-168
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    横隔膜静脈瘤は,出血性の異所性静脈瘤としては稀ではあるが,CTなどで描出される心臓,横隔膜近傍の静脈瘤は門脈圧亢進症患者の約20%に見られたとする報告もあり,発生頻度は必ずしも低くはない.破裂すれば腹腔内,あるいは胸腔内への出血を惹起し得る.自験例,68歳女性のC型肝癌・肝硬変に合併した横隔膜静脈瘤破裂症例を提示した.本例は4年にわたり肝癌の治療,再発を繰り返しており,食道静脈瘤の内視鏡治療も行われていた.その経過中に血胸に伴う呼吸困難を発症し,剖検で右横隔膜静脈瘤の破裂が確認された.一般的な治療としては画像で確認できればinterventionの可能性はあるものの,出血による状態悪化で治療困難が予想される.門亢症患者において横隔膜,心陰影近傍の異常血流が見られた場合は,横隔膜静脈瘤は念頭に置くべき病態である.
原著
  • 久保川 賢, 赤星 和也, 柏原 由美, 遠藤 伸悟, 仲間 直崇, 本村 廉明, 樋口 奈緒美, 中村 和彦
    2009 年 15 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    当院で過去3年間に経験した異所性静脈瘤11症例を対象に,その臨床像をretrospectiveに検討した.症例の内訳は,十二指腸静脈瘤9例と胆管癌術後再発による肝管空腸吻合部静脈瘤の2例であった.十二指腸静脈瘤症例の基礎疾患は全て肝硬変症であった.十二指腸静脈瘤の発見契機,部位および所見は,出血2例,スクリーニングないし経過観察の内視鏡7例,下行脚6例,水平脚2例,球部1例で,F1 5例,F2 3例,F3 1例,びらん1例,RCサイン陽性2例であった.出血した2例と増大傾向を認めた1例に対し,EISを行った.MD-CTおよびEUSによる血行動態評価後に,cyanoacrylate系薬剤とethanolamine oleateの併用によるEISを施行した.2例は初回治療でF0となり,再発を認めなかった.残りの1例は,静脈瘤消失までに9回のEISを要した.全例で重篤な合併症は認めなかった.胆管癌術後の肝管空腸吻合部静脈瘤2例の診断にはダブルバルーン内視鏡が有用であった.
  • 田畑 拓久, 林 星舟, 今村 潤, 木村 公則, 佐伯 俊一
    2009 年 15 巻 2 号 p. 176-183
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    当科で治療を施行した直腸静脈瘤19例を対象に,直腸静脈瘤の血行動態およびその治療戦略について検討した.直腸静脈瘤の主たる供血源は下腸間膜静脈(IMV)で,血管造影(SMA造影・SPA造影)ではIMVの逆流現象が,CTではIMV径の増大が観察された.18例に内視鏡治療(EIS/EVL)を施行し,1例に開腹下シャント閉鎖術を施行したところ(平均観察期間30.6カ月),1例は直腸静脈瘤破裂で死亡,6例は追加治療を要したが,残り12例は追加治療なく経過した.直腸静脈瘤に対する内視鏡治療は,有効かつ簡便・安全な治療法であり,特殊な症例を除き標準治療になりうると考えられた.また,直腸静脈瘤の血行動態評価および治療効果判定には,造影CTが有用と考えられた.
  • —食道静脈瘤治療歴とPHCとの関係—
    荒木 寛司, 小野木 章人, 井深 貴士, 森脇 久隆
    2009 年 15 巻 2 号 p. 184-189
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    【対象】平成11年6月から平成15年6月までに大腸内視鏡検査を施行した門脈圧亢進症患者101例.男性72例,女性29例で平均年齢は64.6歳.大腸静脈瘤,大腸クモ状血管腫様病変(vascular ectasia; VE)に関し検討した.【結果】PHCは大腸VEを25.7%,直腸静脈瘤(RV)を22.7%,上行結腸静脈瘤(AV)を1.0%に認めた.出血頻度はVEが3.8%,RVが21.7%で有意にRVで高率であった.食道静脈瘤治療歴のある症例は46.6%にRVを認め,治療歴のない症例の13.7%に比し有意に高率であった.内視鏡治療は出血例,RV5例にEVL,VE1例にAPCによる焼灼,上行結腸静脈瘤1例に内視鏡補助下外科的結紮術を施行.合併症は1例にEVL後出血性潰瘍を認めた.治療を要したRVは全例食道静脈瘤治療歴を認めた.
臨床研究
  • 松井 繁長, 工藤 正俊
    2009 年 15 巻 2 号 p. 190-194
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    十二指腸静脈瘤は,異所性静脈瘤の一つであり,比較的稀な疾患である.しかし, 近年食道・胃静脈瘤治療の確立に伴い,門脈圧亢進症患者の予後が改善され,十二指腸静脈瘤の頻度が増加傾向にある.十二指腸静脈瘤自験例12例をもとに検討を行った.十二指腸静脈瘤の臨床的特徴は,食道静脈瘤治療歴を有することが多く,出血因子はRCサインではなく,F因子である.画像診断としては,ヘリカルCT,MRAが有用である.出血例に対する治療法は,EOを使用したEISL,α-cyanoacrylateを使用したEIS,EVLなどの内視鏡的治療が有用である.予後は,肝機能不良な肝硬変,肝細胞癌,膵癌などの基礎疾患があるために良好ではない.1,3,5年生存率は,66.7%,48.6%,36.5%である.今後,病態の解明,治療方針の確立が早急に必要である.
  • 小嶋 清一郎, 沼田 誠, 長田 成彦, 塩澤 宏和, 茂手木 成幸, 西崎 泰弘, 広瀬 俊治, 白石 光一, 小泉 淳, 加川 建弘, ...
    2009 年 15 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    過去8年間に経験した異所性静脈瘤18例(男性12例,女性6例)を対象として異所性静脈瘤の臨床像を検討した.異所性静脈瘤の部位は,直腸11例(61%),十二指腸7例(39%)であった.基礎疾患は直腸静脈瘤ではC型肝炎ウイルス(hepatitis type C virus; HCV)による肝硬変(liver cirrhosis; LC) 4例(36%),B型肝炎ウイルス(hepatitis type B; HBV)によるLCと原因不明のLCが各2例(18%),アルコール性肝硬変,原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis; PBC),肝外門脈閉塞症(extrahepatic portal obstruction; EHO)各1例(9%)であったのに対し,十二指腸静脈瘤ではHCV,アルコール各3例(43%),EHO 1例(14%)とアルコール性が直腸静脈瘤で少ない傾向がみられた.血行動態は直腸静脈瘤で2例が同定され,流入路は下腸間膜静脈,流出路は直腸静脈であった.十二指腸静脈瘤の流入路は下膵十二指腸静脈が3例,空腸静脈第1枝が2例で,流出路は性腺静脈が3例,左胃静脈1例であった.治療法は直腸では経過観察が7例,内視鏡的静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation; EVL) 2例,EVL + 内視鏡的静脈瘤硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy; EIS),経皮経肝静脈瘤閉塞術(percutaneous transhepatic obliteration; PTO) 各1例,十二指腸では経過観察,EIS,EVL + EIS,EVL + PTO,バルーン閉塞下逆行性静脈瘤閉塞術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration; B-RTO),EIS + dual balloon occluded embolization; DBOE,プロプラノロール投与各1例と多彩であった.直腸静脈瘤と十二指腸静脈瘤の3年生存率はおのおの36%,83%で十二指腸静脈瘤は直腸静脈瘤に対して有意に生存期間が長かった(p < 0.05).肝癌合併例の3年生存率は17%,非合併例は74%で,肝癌の合併は異所性静脈瘤の生存期間を短縮することが示された(p < 0.05).異所性静脈瘤の死因は肝不全が6例,出血と肝癌がおのおの2例ずつであった.当病院群における過去8年間の異所性静脈瘤の発生部位は直腸静脈瘤と十二指腸静脈瘤で,基礎疾患,血行動態,治療法において差異がみられた.
症例報告
  • 中村 真一, 春山 浩美, 岸野 真衣子, 小西 洋之, 白鳥 敬子
    2009 年 15 巻 2 号 p. 202-205
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    十二指腸静脈瘤は門脈圧亢進症に合併する比較的稀な異所性静脈瘤であり,その治療の要否,治療法の選択について未だ明確なものはない.今回,十二指腸静脈瘤に対して内視鏡的にクリッピングを行った2例を報告した.症例1は48歳,男性,アルコール性肝硬変.十二指腸静脈瘤出血に対しクリッピングを施行し,その後,バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration: B-RTO)で治療した.症例2は72歳,女性,肝硬変(自己免疫性肝炎).食道静脈瘤出血に対して内視鏡的静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation: EVL)を施行,同時に十二指腸静脈瘤を認めたため,予防的にクリッピングを施行した.静脈瘤は消退し,内視鏡的に7カ月の経過を観察したが,明らかな増大を認めなかった.クリッピングは穿孔の危険が少なく,低侵襲かつ追加治療も容易であり,十二指腸静脈瘤に対する予防的治療法の1つとして成立する可能性がある.
  • 金子 順一, 菅原 寧彦, 佐藤 彰一, 竹村 信行, 赤羽 正章, 國土 典宏
    2009 年 15 巻 2 号 p. 206-208
    発行日: 2009/10/31
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    生体肝移植後の肝管空腸吻合部静脈瘤の1例に対し,経皮経肝的に血管形成術(PTA, percutaneous transluminal angioplasty)を施行したので報告する.症例は27歳女性,2001年に胆道閉鎖症に対し生体部分肝移植術を施行した.術後は経過良好であった.約2年5カ月後に全身倦怠感,めまい,腹痛を訴え入院した.入院後に下血を認めたため,Tc-99m消化管出血シンチグラフィを施行し肝管空腸吻合部静脈瘤破裂と診断した.緊急開腹手術を施行し肝管空腸吻合部空腸の前壁を切開し直視下に破裂静脈瘤を結紮縫合することで止血した.術後全身状態が安定してから待機的にPTAを施行した.その後5年間,静脈瘤の再発を認めていない.肝移植後の門脈狭窄による門脈圧亢進症に対しPTAは有効であると考え報告する.
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