抄録
2000年から2009年に当科で治療した消化管静脈瘤破裂症例のうち,治療後1カ月以内に死亡した30例を対象とし,その臨床像から更なる救命率改善への可能性について検討した.原因疾患はC型肝硬変14例,アルコール性10例,B型3例,ほかであった.受診時までに心肺停止となった症例が4例含まれていた.発生部位は食道15例,胃12例,直腸3例で,胃では噴門部の比較的細い静脈瘤からの出血が目立った.内視鏡的硬化療法(EIS)は18例中16例で,内視鏡的静脈瘤結紮術は10例中8例で止血に成功していた.出血死はアルコール性肝硬変の飲酒継続例に多かった.肝不全死した症例は受診時すでにEISの適応のない症例であった.出血死の防止のためには,予防治療とともに精神科と連携した禁酒治療が重要と思われた.肝不全死を防ぐためにも予防治療は重要であるが,適応は慎重に検討すべきと考えられた.