日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
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症例報告
残胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術に胃穿孔を合併し門脈ガス血症を来した1例
小野木 章人荒木 寛司寺倉 陽一小川 憲吾井深 貴士白木 亮清水 雅仁永木 正仁森脇 久隆
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2011 年 17 巻 1 号 p. 19-25

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抄録
患者は74歳,男性.2005年胃癌(fStageIB)に対し幽門側胃切除術の既往あり.術後経過観察目的に2007年6月上部消化管内視鏡検査を行い,残胃吻合部口側,大弯後壁側に15 mm大の白色調の0-IIa病変を認め(生検tub1),2007年11月5日ESDを施行した.周囲切開を開始したところ,切開部位から持続出血および気泡を認め,数分後より連続する咳嗽を来すようになり,胃穿孔と考えESDを中止した.直後の腹部CT検査にて肝内に樹枝状のガス像および門脈本幹,上腸間膜静脈内にガス像,また胃背側に限局したfree airを認め,ESDに伴う穿孔,門脈ガス血症と診断した.穿孔部をクリップにて閉鎖し,経過観察を行った.ESD3時間後の腹部CT検査では,肝内門脈,門脈本幹,上腸間膜静脈内のガス像は減少していた.ESD17時間後の腹部CT検査では,門脈内のガス像はいずれも消失していた.ESDに発症した門脈ガス血症は必ずしも病態の重症度を表していないと考えられるが,稀ではあるが空気塞栓等の致命的な合併症に至る可能性もあり,厳重な患者観察が必要である.
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© 2011 日本門脈圧亢進症学会
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