日本門脈圧亢進症学会雑誌
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症例報告
門脈肺高血圧症の合併が疑われた門脈体循環シャントによる肝性脳症に対して,バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を施行した1例
宮木 大輔相方 浩村上 英介長沖 祐子橋本 義政河岡 友和高木 慎太郎平松 憲脇 浩司高橋 祥一茶山 一彰
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2011 年 17 巻 2 号 p. 96-102

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抄録

症例は73歳女性,原因不明の慢性肝障害にて他院に通院中であったが,肝性脳症による入退院を繰り返すようになった.腹部造影CT検査にて肝硬変および腎静脈系短絡路を認め,門脈体循環シャントによる肝性脳症を疑われ,B-RTO目的にて当院に入院した.入院時の心エコー検査で,推定平均肺動脈圧35mmHgと肺高血圧を認めた.原因となる循環器,呼吸器疾患,膠原病は認めず,門脈圧亢進症に伴う肺高血圧症と考えた.B-RTOを施行し,脳症は改善を認め,肺高血圧症に対して,シルデナフィルクエン酸投与,在宅酸素療法を導入し退院した.退院後,経過良好であったが,退院6カ月後および8カ月後に脳症再発にて入院,アミノ酸製剤の投与にて軽快した.現在15カ月経過し,脳症の再発なく,肝予備能および肺高血圧症は,改善はないもののB-RTO前の状態を維持している.本症例は,門脈体循環シャントにおける門脈肺高血圧症の病態と治療法を考える上で示唆に富む症例であると思われ報告する.

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© 2011 日本門脈圧亢進症学会
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