抄録
症例は48歳,男性.45歳時よりB型肝硬変,肝性脳症にて他院で入退院を繰り返し,意識障害,発語障害,四肢振戦のため1981年2月(48歳時)当院へ転院.内科的治療で軽快するも,以後3年にわたり反復する肝性脳症のため入退院を繰り返した.入院中に施行した血管造影では30mm径の脾腎短絡路と門脈血流の盗流現象を認め,腹腔鏡では赤色調の乏しい一部結節形成のある白褐色肝を認めたことから,頻回に起こる脳症の主たる原因は肝臓自体よりも脾腎短絡路にあるものと考え,1984年2月にHassab手術+短絡路閉鎖術を施行した.門脈圧は160mmH2Oから310mmH2Oに上昇したが,術後肝不全や腹水貯留は認められなかった.その後肝性脳症は出現せず,肝合成能も徐々に改善したが,食道静脈瘤の増悪も認め,内視鏡的治療を要した.手術1年半後の腹腔鏡では肝の色調の改善と萎縮の改善を認め,5年後の血管造影では肝動脈の屈曲蛇行の改善と径の増大,門脈本幹径の増大が観察された.