日本門脈圧亢進症学会雑誌
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19 巻, 2 号
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Editorial
原著
  • 安中 哲也, 河本 博文, 萩原 宏明, 三宅 康広, 山本 和秀
    2013 年 19 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    当科において2003~2010年に胃静脈瘤15例,肝性脳症10例の計25例に塞栓療法を施行した.内訳はB-RTO 4回,PTO 12回,B-RTO とPTOを併用したDBOE 8回,trans ileocolic vein obliteration(TIO)1回であった.胃静脈瘤にはB-RTO 4回,PTO 3回,TIO 1回,DBOE 9回の治療手技が行われた.全例で胃静脈瘤の改善が得られたが,1例で胃静脈瘤再発,5例で食道静脈瘤増悪がみられた.食道静脈瘤は全例内視鏡的に治療し得た.1年,5年生存率はそれぞれ80%,56%であった.肝性脳症にはB-RTO 2回,PTO 9回の治療手技が行われた.脳症症状,血清アンモニア,プロトロンビン時間,Child-Pugh scoreに有意な改善がみられた.1年,5年生存率はそれぞれ80%,40%であった.これらのIVR治療は胃静脈瘤と肝性脳症に対する,安全で有効な治療法であると考えられた.
臨床研究
  • 川中 博文, 江頭 明典, 伊藤 心二, 東 貴寛, 枝川 愛, 松原 裕, 富野 高広, 江藤 祥平, 永田 茂行, 橋本 健吉, 内山 ...
    2013 年 19 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    肝硬変症における脾摘術後門脈血栓予防のためのAT-III 製剤の投与基準について検討した.(研究1) Ann Surg 2010;251:76-83で報告した症例を再検討し,術前AT-III値をcut-off値として門脈血栓予測のROC曲線を作成した.AT-III値61%で感度100%,特異度67%であり,当院におけるAT-III製剤投与基準の暫定値を術前AT-III値60%以下とした.(研究2) 08年4月から11年3月までに腹腔鏡下脾摘術を施行した肝硬変53例を対象とし,術前AT-III値が60%以下の症例に対して,術翌日よりアンスロビンP1500単位/日を3日間投与した.(1)AT-III非投与群では16例中7例(44%)に門脈血栓が発症したが,投与群では37例中3例(8%)のみであった(p<0.01).(2)AT-III非投与群において,60%<AT-III<70%では,3例中3例(100%)に血栓が発症した.AT-III≧70%では,脾静脈径10mm以上の6例中4例(67%)に血栓が発症したが,脾静脈径10mm 未満では血栓は認めなかった.以上より,AT-III製剤の投与基準を術前AT-III値70%以下または脾静脈径10mm 以上とすることで,門脈血栓が予防できると考えられた.
  • 北川 翔, 佐藤 隆啓, 木村 睦海
    2013 年 19 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症を背景とした十二指腸血管拡張は門脈圧亢進性十二指腸症の一部と考えられ,当科での60例を対象としその臨床的特徴および治療適応について後方視的に検討を行った.60例全例で食道静脈瘤が併存し,41例(68.3%)で食道静脈瘤に対する内視鏡的治療歴を認めた.門脈圧亢進症性胃症の併存率は41.7%,胃前庭部毛細血管拡張症の併存率は50.0%であった.十二指腸血管拡張の存在部位は球部が78.3%と高頻度であった.60例中16例(26.7%)で十二指腸血管拡張からの出血を認め,6例でアルゴンプラズマ凝固法(APC)を用いた止血処置に成功した.残りの10例は止血処置を施行しなかったが,再検時には出血を認めなかった.貧血進行例が治療適応と考えられ,その治療法としてAPCによる止血処置が有用であった.
  • 廣岡 昌史, 越智 裕紀, 小泉 洋平, 徳本 良雄, 阿部 雅則, 池田 宜央, 田中 宏明, 日浅 陽一, 恩地 森一
    2013 年 19 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    血小板数が5万/μL未満に低下した症例においてラジオ波焼灼術後に起こる腹腔内出血について後ろ向きに検討をした.血小板数5万/μL未満でRFAを施行した77例88結節を対象とし血小板数5万/μL以上の1298例1411結節をコントロールとした.血小板数5万/μL未満の群での平均血小板数は4.0±0.7万/μLであった.治療直後のモニタリングをドップラー超音波検査と造影超音波検査にて行った.抜針5分後に出血を疑う症例は7例(10.0%)にみられた.これらの症例には穿刺部に対し再度焼灼を行った.治療終了3時間後にヘモグロビンが2.0g/dL以上低下した症例は1例もなかった.血小板数5万/μL未満の症例では出血のモニタリングを行うことで出血の合併症を回避できた.コントロール群では2例に腹腔内出血がみられた.血小板数5万/μL未満の症例は5万/μL以上の症例に比べ腹腔内出血の合併症頻度に差はみられなかったものの,治療直後には超音波検査で高率に出血があり,出血の危険性は高い.このため治療後の出血の有無をモニタリングすることが重要である.
症例報告
  • 廣岡 昌史, 越智 裕紀, 小泉 洋平, 川崎 敬太郎, 布井 弘明, 徳本 良雄, 阿部 雅則, 池田 宜央, 田中 宏明, 日浅 陽一, ...
    2013 年 19 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.非アルコール性脂肪肝炎(non alcoholic steatohepatitis;NASH)による肝硬変があり門脈圧亢進症をきたしていた.2005年10月より食道静脈瘤,前庭部びまん性毛細血管拡張(gastric antral vascular ectasia:GAVE),門脈圧亢進症性十二指腸症(portal hypertensive duodenopathy:PHD)があり著明な貧血があった.内視鏡的静脈瘤硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy:EIS)とGAVEに対するアルゴンプラズマ凝固止血法(argon plasma coagulation:APC)を繰り返されていたが,PHDは改善しないため貧血は一時改善するもすぐに悪化していた.2009年1月に貧血が再度増悪した.PHDに対して門脈圧亢進症の改善を目的に部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization:PSE)を施行.GAVEにもAPCを加え貧血は著明に改善した.PHDへのPSEの報告はまれで貴重な症例と考えられた.
  • 石橋 啓如, 宮川 明祐, 松島 知広, 秦 佐智雄, 紫村 治久, 糸林 詠, 志村 謙次
    2013 年 19 巻 2 号 p. 134-139
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    出血性ストーマ静脈瘤は門脈圧亢進症を呈するストーマ患者の稀な合併症であるが,頻回な出血を呈することからしばしば治療に難渋する.これまでもストーマ静脈瘤に対する硬化療法はその低侵襲性と簡便性から有用性が報告されてきたが,根治性は低く,再発率を低くする治療法が望まれていた.今回我々は,化学療法中の直腸癌術後再発患者で多発肝転移増悪に伴い二次性バッド・キアリ症候群を生じ,噴出性のストーマ静脈瘤出血を来たした症例を経験した.高度の門脈圧亢進症が想定され,通常の出血点に対する硬化療法ではなく,超音波ガイド下に静脈瘤を穿刺し,圧迫下で静脈瘤造影下硬化療法を施行した.硬化剤はオルダミンと造影剤の混濁液を使用し,静脈瘤から供血路である下腸間膜静脈の分枝まで造影し,約10分間の停滞でストーマ静脈瘤は完全に硬化した.本治療法を簡便なストーマ静脈瘤硬化療法の一手段と考え報告する.
  • 江口 英利, 太田 正之, 川崎 貴秀, 川野 雄一郎, 甲斐 成一郎, 田上 秀一, 清末 一路, 森 宣, 北野 正剛
    2013 年 19 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.2年前にアルコール性肝硬変と診断され近医で肝庇護療法を受けていた.上部消化管内視鏡検査にて孤立性胃静脈瘤を認め,当科にて予防的にバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)施行した.治療終了6時間後より,III度の肝性脳症と消化管出血が出現し,翌日には肝性脳症はV度となり,B-RTO後20日目に死亡した.肝予備能が低下した症例に対するB-RTOの適応は慎重にすべきと考えられた.
  • ―脾腎短絡路閉鎖により肝性脳症および肝合成能が改善したB型肝硬変の1例―
    林 星舟
    2013 年 19 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/12/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.45歳時よりB型肝硬変,肝性脳症にて他院で入退院を繰り返し,意識障害,発語障害,四肢振戦のため1981年2月(48歳時)当院へ転院.内科的治療で軽快するも,以後3年にわたり反復する肝性脳症のため入退院を繰り返した.入院中に施行した血管造影では30mm径の脾腎短絡路と門脈血流の盗流現象を認め,腹腔鏡では赤色調の乏しい一部結節形成のある白褐色肝を認めたことから,頻回に起こる脳症の主たる原因は肝臓自体よりも脾腎短絡路にあるものと考え,1984年2月にHassab手術+短絡路閉鎖術を施行した.門脈圧は160mmH2Oから310mmH2Oに上昇したが,術後肝不全や腹水貯留は認められなかった.その後肝性脳症は出現せず,肝合成能も徐々に改善したが,食道静脈瘤の増悪も認め,内視鏡的治療を要した.手術1年半後の腹腔鏡では肝の色調の改善と萎縮の改善を認め,5年後の血管造影では肝動脈の屈曲蛇行の改善と径の増大,門脈本幹径の増大が観察された.
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