日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
Print ISSN : 1344-8447
ISSN-L : 1344-8447
症例報告
Hassab手術後の門脈血栓症予防としてのトロンボモジュリンアルファ投与経験
渡辺 徹松井 恒志奥村 知之長田 拓哉塚田 一博
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 21 巻 2 号 p. 128-134

詳細
抄録
トロンボモジュリンアルファ(リコンビナントトロンボモジュリン:rTM)はトロンビンと特異的に結合しその生成を抑える新規の作用機序をもつ抗凝固薬である.今回,Hassab手術後に門脈血栓症予防としてrTMを投与した1例を報告する.症例は70歳男性.C型肝硬変,脾機能亢進症にて外来フォロー中であった.2013年11月の腹部CT検査にて肝S8に28 mmの肝細胞癌と易出血性の食道静脈瘤を認めた.Hassab手術を先行し2期的に肝切除を行う方針とし,同年12月腹腔鏡補助下Hassab手術を施行した.rTMは手術当日および翌日に投与した.術後出血および門脈血栓症は認めず第20病日に退院となった.周術期におけるTAT, PIC, FMCなどの凝固線溶系マーカーの変動は,門脈血栓症発症例に比して小さい傾向であった.
rTMは術後の過凝固や線溶系の亢進を抑制し凝固線溶系のバランスを保つ.よってrTMの使用は出血傾向がありながら血栓症,特に門脈血栓症のリスクが高いHassab手術後症例における新たな門脈血栓症予防方法として安全で有効な方法ではないかと考えられる.
著者関連情報
© 2015 日本門脈圧亢進症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top