2016 年 22 巻 1 号 p. 34-39
非代償性肝硬変の難治性胸腹水に対する,胸腹腔-静脈シャント(peritoneovenous or pleurovenous shunt:PVS)の有用性を明らかにする目的で,当院でPVSを留置した25例の臨床像を検討した.留置期間は11~1899日,中央値は189日であった.在宅期間は0~1816日,中央値は93日であった.PVSの留置後,体重,腹囲に有意な減少がみられ,22例(88.0%)で胸腹水の減少を認め,17例(68.0%)で利尿薬の減量が可能となった.合併症は,留置後1か月以内で臨床的な播種性血管内凝固(DIC)が5例(25.0%)にみられ,このうちDICが原因と思われる脳出血で1例(4.0%)が死亡した.1か月以降ではシャント閉塞6例(24.0%),感染2例(8.0%),血管側のチューブ脱落2例(8.0%),腹痛2例(8.0%)を認め,チューブの交換,再挿入・固定,抜去等を要した.経過不良群(効果が得られず退院不可であったか,効果はあっても退院後数日で死亡)とそれ以外の症例との比較検討では,経過不良群のBUN, Crが有意に高値であり,ChEが有意に低値であった.PVSは,非代償性肝硬変患者における胸腹水治療に有用と考えられるが,腎機能低下例では胸腹水減少効果が得られないか,得られても生存期間が短い可能性がある.