2016 年 22 巻 2 号 p. 166-171
症例は70歳男性のアルコール性肝硬変患者.上切歯列から35 cmの中部食道に15 mm大の平坦発赤病変を食道静脈瘤上に認めた.Narrow-band-imaging拡大所見から扁平上皮癌と診断した.まず食道静脈瘤に対し静脈瘤内注入法による硬化療法を施行し,その後内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)にて病変を一括切除した.ESDの際には粘膜下層に繊維化は認めず,術中の出血のコントロールは良好であった.静脈瘤上に発生した食道癌に対してESDを施行する場合,可能であれば徹底的に食道静脈瘤を治療し,術中の出血を極力予防することが望ましい.ESD術前の静脈瘤内注入法による食道静脈瘤硬化療法は,安全性と根治性を兼ね備えた有用な選択肢である.