日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
Print ISSN : 1344-8447
ISSN-L : 1344-8447
臨床研究
慢性肝疾患症例に対する完全腹腔鏡下脾臓摘出術の検討:手技の安全性と定型化に着目して
中沼 伸一大畠 慶直林 泰寛
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 22 巻 2 号 p. 159-165

詳細
抄録

慢性肝疾患の集学的治療の一つとして腹腔鏡下脾臓摘出術が行われているが,門脈圧亢進症や脾腫を有する場合は出血のリスクを認め,安全性の考慮が必要である.当科では慢性肝疾患を有する症例に対する完全腹腔鏡下脾臓摘出術の安全対策として,①視野確保が難しくなる脾上極の授動時に2本の鉗子にて脾を背側から挙上させて視野確保する工夫,②脾門部処理では,脾上極が内側に張り出す形状を意識して自動縫合器を無理なく挿入し,③脾門部の厚さや含まれる血管径の違いに応じてステープル高さの異なるカートリッジを選択し分割処理する手技を定型化してきた.手術成績では手術時間の短縮傾向,出血量の減少傾向を認め,同手技は手術の安全性の確保や定型化に貢献できる可能性がある.しかし,完全腹腔鏡下脾臓摘出術は脾体積800~900 mlまでは遂行可能であったが,それ以上では用手補助下手術に移行が必要であり,脾体積による症例の選択が必要と考えられた.

著者関連情報
© 2016 日本門脈圧亢進症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top