日本門脈圧亢進症学会雑誌
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臨床研究
低ナトリウム血症を合併した治療抵抗性腹水患者に対するトルバプタンの有効性について
大木 隆正塩田 吉宣田川 一海
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2016 年 22 巻 4 号 p. 245-250

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抄録

【背景・目的】TLVは欧米において低ナトリウム血症の治療薬としても用いられており,低ナトリウム(Na)血症は予後不良因子としても知られている.今回我々は,低Na血症を有する治療抵抗性腹水患者を対象に,TLVの有効性に関して後ろ向きに検討した.【方法】2015年2月28日までにTLVが投与された治療抵抗性腹水患者94例の中で,血清Na値が135 mEq/L以下の46症例を対象とした.TLVは原則3.75 mg/dayから開始され,腹水に対する治療効果を見ながら7.5 mg/dayまで用量を増やした.経過中血清Na値が一時的にでも135 mEq/Lを超えた群を低Na改善群,超えなかった群を低Na非改善群として,それぞれの群の患者背景を比較するとともに,腹水の改善度合い,および低Na血症の改善が予後に及ぼす影響を検討した.【結果】46例のうち低Na血症改善群は20例,低Na非改善群は26例であった.累積生存率(10日,30日,60日)は,低Na改善群で100%,78.9%,62.2%,低Na非改善群で90.5%,47.6%,32.7%であった(p=0.02).多変量解析では,低Na血症の改善(HR:0.34,p<0.01),腹水の改善(HR:0.40,p=0.02),ステージ3以上の進行肝細胞癌(HR:3.80,p<0.01)が生存に影響を及ぼす独立因子であった.【結語】TLVの投与により一時的に低Na血症が改善,または,治療抵抗性腹水の改善を認めた群では,改善を認めなかった群と比べて予後が良好であった.

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© 2016 日本門脈圧亢進症学会
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