日本門脈圧亢進症学会雑誌
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22 巻, 4 号
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Editorial
原著
  • 島田 昌明, 岩瀬 弘明, 平嶋 昇, 龍華 庸光
    2016 年 22 巻 4 号 p. 221-225
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    【目的】難治性腹水合併肝硬変症のトルバプタン治療について栄養学的治療効果と長期予後を検討した.【方法】2011年4月以降に腹水合併肝硬変症44例にトルバプタン治療を導入した.投与前と3週後の腹満をSupport Team Assessment Schedule日本語版(STAS-J)でスコア化した.栄養学的評価はControlling Nutritional Status(CONUT)法を用いた.食事摂取エネルギー量およびCONUTスコアを血清アルブミン(Alb)値,総リンパ球数(TLC),総コレステロール(T-cho)値から算出し栄養状態を評価した.長期予後についても検討した.【結果】STAS-Jによる腹満改善は65.9%に認めた.Alb, TLC, T-choはいずれも増加し,CONUTスコアは8.6±2.1から7.5±2.7へ改善した(p<0.01).トルバプタン治療無効例のCONUTスコアは9.6±1.6から9.3±2.1と不変(NS)であったが,有効例では8.2±2.2から6.8±2.7と改善した(p<0.01).トルバプタン導入前のCONUTスコアは無効例でより不良であった(p<0.05).平均生存期間は412日で,無効例は234日であったが,有効例では508日(p<0.05)と予後が改善した.【結論】腹水合併肝硬変症に対するトルバプタン治療の効果予測因子として導入前の栄養状態が重要であり,患者の栄養状態はトルバプタン治療を導入することにより改善し,予後の向上が期待された.

  • —側副路としての左胃静脈処理の観点から—
    工藤 康一, 門野 義弘, 林 洋光, 藤山 俊一郎
    2016 年 22 巻 4 号 p. 226-233
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    孤立性胃静脈瘤に対して当院でB-RTO(Balloon-occluded Retrograde Transvenous Obliteration)治療を試みた19例について,側副路処理が困難となる要因を治療完遂例と非完遂例に分けて検討した.側副路処理中にバルーン閉塞下逆行性静脈造影で左胃静脈の逆流が描出される例は,非描出例と比べて治療完遂率が低かった.その逆流程度を層別化すると,左胃静脈が胃静脈瘤へ流入する推定割合(左胃静脈径2/胃静脈瘤径2)と正の相関を示した.同割合がおおむね0.45を超えると,定型手技での左胃静脈閉鎖は困難となり,B-RTOを完遂できた例はなかった.副流入路としての左胃静脈は,B-RTOの際に逆流を来し処理困難な副流出路となることがある.同割合はB-RTO側副路処理の難易度を事前に予測する指標となりうるかもしれない.

  • 三好 謙一, 孝田 雅彦, 磯本 一, 松居 真司, 谷口 雄司
    2016 年 22 巻 4 号 p. 234-239
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    【目的】肝性胸水の一部は横隔膜交通症が原因である.今回我々は,超音波造影剤perflubutane腹腔内投与にて診断した横隔膜交通症に対して胸腔鏡手術を行い,その有用性を検討した.【方法】2007年10月~2015年12月の間,胸腹水を認めた肝硬変患者17例に対しperflubutaneを0.5 ml腹腔内投与し,胸腹腔を超音波にて観察した.【結果】11例(64.7%)でperflubutaneが胸腔内へ噴出し,横隔膜交通症と診断した.耐術可能と判断した5例で胸腔鏡下観察を行い,4例で縫縮術を施行した.1例は交通部を同定できず,横隔膜補強の後,胸膜癒着を追加した.4例で胸水の消失,1例で減少が得られたが,4例で腹水の増加を認めた.うち2例で経頚静脈肝内門脈シャント術を要したが,呼吸苦は改善した.【結語】横隔膜交通症を合併した肝性胸水に対する横隔膜縫縮術は安全に施行でき,生活動作の改善に貢献した.

  • 和久井 紀貴, 荻野 悠, 小林 康次郎, 向津 隆規, 松清 靖, 松井 哲平, 中野 茂, 永井 英成, 五十嵐 良典, 住野 泰清
    2016 年 22 巻 4 号 p. 240-244
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    【目的】C型慢性肝疾患(CHC)に合併する脾腫と造影USで得られる肝血流バランスの関連性を検討する.

    【対象と方法】対象は約6年間でSonazoid造影USを施行したCHC 159例.Sonazoid静注後40秒間,右肋間走査で肝S5-6領域と右腎の染影動態を記録した.記録した動画から,染影開始5秒までを赤色,5秒以降を黄色に色分けするような設定で肝実質血流のArrival time Parametric Imagingを作成し赤色面積の割合(ROR)を算出した.その後,各症例から得られた脾臓のサイズとRORを対比した.

    【成績】脾腫ありとなしの症例のRORはp=0.059と有意な差は認めなかった.またRORと脾腫の相関については,その係数が0.29であり相関は弱い結果であった.

    【結論】肝炎の病期進行に伴い門脈優位から動脈優位へと変化する肝血流バランスの変化は脾腫の程度と相関するがその関連性は弱いものであった.

臨床研究
  • 大木 隆正, 塩田 吉宣, 田川 一海
    2016 年 22 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】TLVは欧米において低ナトリウム血症の治療薬としても用いられており,低ナトリウム(Na)血症は予後不良因子としても知られている.今回我々は,低Na血症を有する治療抵抗性腹水患者を対象に,TLVの有効性に関して後ろ向きに検討した.【方法】2015年2月28日までにTLVが投与された治療抵抗性腹水患者94例の中で,血清Na値が135 mEq/L以下の46症例を対象とした.TLVは原則3.75 mg/dayから開始され,腹水に対する治療効果を見ながら7.5 mg/dayまで用量を増やした.経過中血清Na値が一時的にでも135 mEq/Lを超えた群を低Na改善群,超えなかった群を低Na非改善群として,それぞれの群の患者背景を比較するとともに,腹水の改善度合い,および低Na血症の改善が予後に及ぼす影響を検討した.【結果】46例のうち低Na血症改善群は20例,低Na非改善群は26例であった.累積生存率(10日,30日,60日)は,低Na改善群で100%,78.9%,62.2%,低Na非改善群で90.5%,47.6%,32.7%であった(p=0.02).多変量解析では,低Na血症の改善(HR:0.34,p<0.01),腹水の改善(HR:0.40,p=0.02),ステージ3以上の進行肝細胞癌(HR:3.80,p<0.01)が生存に影響を及ぼす独立因子であった.【結語】TLVの投与により一時的に低Na血症が改善,または,治療抵抗性腹水の改善を認めた群では,改善を認めなかった群と比べて予後が良好であった.

  • 川中 博文, 赤星 朋比古, 松本 佳大, 吉田 佳弘, 長尾 吉泰, 橋本 直隆, 吉田 大輔, 金城 直, 山口 将平, 富川 盛雅, ...
    2016 年 22 巻 4 号 p. 251-258
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    胃上部血行郭清と脾摘を組み合わせたHassab術は,すべての胃静脈瘤に対して有用であるが,腹腔鏡下で行う場合,術中出血などのリスクが高くなるだけでなく,不十分な血行郭清で終わってしまう可能性もある.安全かつ効果的な腹腔鏡下Hassab術を行うためには,胃静脈瘤の血行動態の理解が必要不可欠である.当科では,胃静脈瘤に対する低侵襲外科治療として,標準化された安全な腹腔鏡下脾摘術の手技を基本とし,胃静脈瘤の血行動態に応じて,従来通りの血行郭清を行う腹腔鏡下Hassab術だけでなく,短胃静脈や後胃静脈が胃静脈瘤の供血路である症例には,腹腔鏡下脾摘術に加えて胃大弯側血行郭清のみ行う腹腔鏡下petit Hassab術を行っている.本研究では,腹腔鏡下Hassab術を12例,腹腔鏡下petit Hassab術を15例に施行し,全例で胃静脈瘤は消失し,平均観察期間47か月で再発・出血は経験していない.以上より,胃静脈瘤に対する腹腔鏡下手術は有用であり,左胃静脈が関与しない胃静脈瘤に対しては,胃小弯側の血行郭清を省略する腹腔鏡下petit Hassab術も胃静脈瘤治療として許容できると考えられた.

症例報告
  • 林田 まり子, 松本 直樹, 石井 大雄, 水谷 卓, 宮澤 祥一, 中河原 浩史, 小川 眞広, 松岡 俊一, 森山 光彦
    2016 年 22 巻 4 号 p. 259-265
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
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    症例は78歳男性.肝硬変のため通院中であったが,腹部超音波と造影CTで門脈本幹に20 mm,臍部に14 mmの血栓を認めた.ワーファリン1 mg/日から内服を開始し,PT-INR2.0を目標値としてワーファリン量をコントロールした.経時的に超音波のB-modeに加え,B-Flowで血栓による欠損像を測定したところ,PT-INRの延長に伴い血栓は縮小傾向となり,8週目で消失した.以降,3 mgを維持量とした.2か月の造影CTでも血栓は消失していた.経過中に出血症状などの合併症は見られなかった.B-Flowは非造影の超音波血流評価法で,空間分解能に優れ,繰り返し評価可能である.今回,本法を用いて門脈血栓の治療効果を評価し,ワーファリン投与量に反映させた.投与量PT-INRと治療効果との関連が示唆されたことも併せ,貴重な症例と考えて報告した.

  • 大庫 秀樹
    2016 年 22 巻 4 号 p. 266-271
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代,男性.関節リウマチで近医通院しプレドニゾロン(PSL)とメソトレキサート(MTX)を投与されていた.咳嗽を認め,胸腹水を指摘されたため,他院に入院し穿刺液はいずれも漏出性で,精査されるも原因不明であったが,利尿剤の投与にも効果がないため,当院に入院した.血液検査,腹部超音波とCT検査で肝硬変が疑われた.上部消化管内視鏡検査でF1の食道静脈瘤がみられた.HCV抗体,HBs抗原・HBs抗体陰性,抗核抗体(ANA)40倍,抗ミトコンドリアM2抗体陰性で,機会飲酒のみであった.また,上部消化管内視鏡検査では十二指腸に散布性白点を認め,カプセル内視鏡では小腸全体に散布性白点の散在がみられ,蛋白漏出シンチグラフィーでは小腸より軽度の漏出がみられたことから,蛋白漏出性腸症(PLE)を合併したものと考えられた.MTXの中止と栄養療法と利尿薬の投与により症状は軽快し,画像上も肝萎縮の改善とPLEの改善を認め,肝障害の成因はMTXによる薬剤性肝障害と判断した.MTXによる薬剤性肝障害に蛋白漏出性腸症を合併し,カプセル内視鏡で腸管リンパ管拡張症を観察しえた1例を報告した.

  • 野口 謙治
    2016 年 22 巻 4 号 p. 272-279
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    症例1は70歳代女性,肝硬変の経過中に貧血の進行を認め,EGD行ったところ十二指腸下行脚にF2の静脈瘤を認め,待機的にEISを行いcyanoacrylate 2 mlを血管内に注入し軽快した.症例2は70歳代女性,HCCに対するTACE目的の入院中に行ったEGDで十二指腸下行脚にF2の静脈瘤を認め,軽度の出血を伴うことからEVLで止血処置を行った.翌日再出血,ショック状態となったため緊急EIS行いHistoacryl 2 ml,EO 3 mlを血管内に注入したが,後日再々出血を来した.再度EIS行ったところ止血が得られたが門脈血栓症を生じた.その後徐々に肝不全が進行し,敗血症を合併し永眠された.十二指腸静脈瘤の治療において,EVLは有効例も報告されているが,再出血率も高いので,緊急例ではシアノアクリレート系薬剤を用いたEISを第一選択とすべきであると考える.EISとBRTO等のIVRはいずれも有効な手技と考えるが,単独治療のみで止血が不十分な場合は複数の手技を組み合わせることが重要と思われた.

  • 田中 一平, 大久保 裕直, 中寺 英介, 深田 浩大, 井草 祐樹, 宮崎 招久, 國分 茂博
    2016 年 22 巻 4 号 p. 280-284
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

    症例は63歳女性.B型肝硬変で通院中,部分的脾動脈塞栓術後の門脈血栓に対して抗凝固療法を施行中に肛門静脈瘤より出血を認めたため入院となった.噴出性の大量出血であったため一時ショック状態となり,大量輸液,輸血を行い出血部位を結紮し一時的に止血を得た.治療法として,目視下にサーフロー針を肛門静脈瘤に直接穿刺しethanolamine oleate with iopamidol(EOI)を用いた硬化剤を注入する目視下穿刺硬化療法(Visual Injection Sclerotherapy)を選択した.左右の肛門静脈瘤に対して施行し,良好な止血を得ることが可能であった.

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