2016 年 22 巻 4 号 p. 266-271
症例は60歳代,男性.関節リウマチで近医通院しプレドニゾロン(PSL)とメソトレキサート(MTX)を投与されていた.咳嗽を認め,胸腹水を指摘されたため,他院に入院し穿刺液はいずれも漏出性で,精査されるも原因不明であったが,利尿剤の投与にも効果がないため,当院に入院した.血液検査,腹部超音波とCT検査で肝硬変が疑われた.上部消化管内視鏡検査でF1の食道静脈瘤がみられた.HCV抗体,HBs抗原・HBs抗体陰性,抗核抗体(ANA)40倍,抗ミトコンドリアM2抗体陰性で,機会飲酒のみであった.また,上部消化管内視鏡検査では十二指腸に散布性白点を認め,カプセル内視鏡では小腸全体に散布性白点の散在がみられ,蛋白漏出シンチグラフィーでは小腸より軽度の漏出がみられたことから,蛋白漏出性腸症(PLE)を合併したものと考えられた.MTXの中止と栄養療法と利尿薬の投与により症状は軽快し,画像上も肝萎縮の改善とPLEの改善を認め,肝障害の成因はMTXによる薬剤性肝障害と判断した.MTXによる薬剤性肝障害に蛋白漏出性腸症を合併し,カプセル内視鏡で腸管リンパ管拡張症を観察しえた1例を報告した.