2016 年 22 巻 4 号 p. 259-265
症例は78歳男性.肝硬変のため通院中であったが,腹部超音波と造影CTで門脈本幹に20 mm,臍部に14 mmの血栓を認めた.ワーファリン1 mg/日から内服を開始し,PT-INR2.0を目標値としてワーファリン量をコントロールした.経時的に超音波のB-modeに加え,B-Flowで血栓による欠損像を測定したところ,PT-INRの延長に伴い血栓は縮小傾向となり,8週目で消失した.以降,3 mgを維持量とした.2か月の造影CTでも血栓は消失していた.経過中に出血症状などの合併症は見られなかった.B-Flowは非造影の超音波血流評価法で,空間分解能に優れ,繰り返し評価可能である.今回,本法を用いて門脈血栓の治療効果を評価し,ワーファリン投与量に反映させた.投与量PT-INRと治療効果との関連が示唆されたことも併せ,貴重な症例と考えて報告した.