日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
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原著
アルコール性肝硬変における内視鏡的食道静脈瘤硬化療法前後の血行動態の変化―C型肝硬変との比較―
重福 隆太高橋 秀明中野 弘康服部 伸洋池田 裕喜渡邊 綱正松永 光太郎松本 伸行奥瀬 千晃佐瀬 茂伊東 文生鈴木 通博
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2017 年 23 巻 1 号 p. 22-32

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抄録

【背景】門脈圧亢進症では背景肝疾患の病因が重要で,病態により治療効果や再発率に影響すると考えられる.しかしアルコール性肝硬変(AL-LC)とC型肝硬変(C-LC)における血行動態の相違は明らかではない.【目的】AL-LC,C-LCにおいてXenon CT(Xe-CT)を用い食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy;EIS)前後の肝血流量を比較し血行動態の違いを明らかにする.

【方法】対象はAL-LC 18例(男17例),C-LC 19例(男10例).Xe-CTは,既報(Med Phys. 2008;35:2331)のごとく,治療前と治療1週後で門脈,肝動脈組織血流量(PVTBF,HATBF;ml/100 ml/min)を測定し,さらにPVTBF/HATBF(P/A)ratioを算出しAL-LCとC-LCの両者を治療前後で比較した.【結果】AL-LCの治療前/後の肝血流量は,PVTBF 25.6±6.3/29.8±6.2(p=0.006),HATBF 21.0±10.1/19.5±5.6,P/A ratio 1.4±0.7/1.7±0.7,C-LCの治療前/後の肝血流量は,PVTBF 28.9±9.4/29.2±8.2(NS),HATBF 24.1±16.1/18.5±8.2,P/A ratio 1.6±0.8/1.8±0.9.AL-LC群で再発率が高い傾向であった(p=0.08).【考察】AL-LCは入院後断酒しEISで側副血行路を閉鎖することでPVTBFが増加する可能性が推察された.しかしAL-LCは短期再発し,退院後の断酒継続ができていないことが主要因と考えられた.

【結論】C-LCとは異なり,AL-LCでは断酒によりEISで増加した門脈血流を受容しやすくなり,EIS後に門脈血流が増加した可能性が示唆された.

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© 2017 日本門脈圧亢進症学会
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