日本門脈圧亢進症学会雑誌
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原著
non-fibered IDCを使用したpartial B-RTOによる肝性脳症の治療
小笠原 光成廣瀬 享岩﨑 信二越智 経浩西原 利治
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2017 年 23 巻 1 号 p. 33-40

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抄録

バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration;B-RTO)はシャント脳症の治療としても有効とされている.しかしシャント血管の完全閉塞により術後の門脈圧上昇を来し,難治性腹水や静脈瘤の悪化等の合併症を経験することがある.この圧上昇を回避するために,我々はシャント脳症に対し,non-fibered interlocking detachable coil(以下IDC)を用いた部分閉塞によるB-RTO(以下partial B-RTO)を施行しその効果を検討した.内科的治療に抵抗性を示し,左腎静脈を排血路とする肝性脳症患者11例を完全閉塞群5例とpartial B-RTO群6例に分類にて比較検討した.血中アンモニア濃度は術前後で有意に低下し(完全閉塞群:p<0.01, partial B-RTO群:p<0.05),平均血中アンモニア濃度低下率は完全閉塞群(48.6%)とpartial B-RTO群(42.0%)には有意差は認められなかった.改善効果は半年以上持続した.完全閉塞群では難治性腹水,食道静脈瘤の悪化や血栓などの合併症を2例で認めたが,partial B-RTO群では認めなかった.non-fibered IDCを用いたpartial B-RTOはシャント脳症に対し安全で有効な治療法であり,患者のQOLに有用であると考えられた.

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© 2017 日本門脈圧亢進症学会
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